こんにちは、Developer Relations アドボケイトの山本です。
先日、ヤフーの社内ハッカソン「Internal Hack Day」について紹介しましたが、時を同じくして「Hack U 2019」という学生向けハッカソンを開催していました。
全国5会場で開催し私もすべての会場に参加させていただきました。この記事ではHack Uの雰囲気を始め、今回生まれた100を超える作品の傾向やどんな技術が多く使われていたかなどをご紹介します。
Hack Uとは?
「Hack U」はヤフー主催の学生ハッカソンです。
限られた期間の中でプロダクトを学生自ら企画・開発・発表するイベントで、期間中はヤフー社員がSlackやオフライン相談会で企画面、技術面のサポートを行います。
Hack Uには個別開催と呼ばれる特定の学校の在校生のみを対象にした回と、オープン開催と呼ばれる所属を限定しない回の2種類あります。今回紹介するHack U 2019は7年目のオープン開催です。
開催年によっては特定のテーマを設けることもあるのですが、7年目となる今年はフリーテーマとし、東京・名古屋・福岡・大阪・仙台の5会場で開催し、112チームがプロダクトの発表をしてくれました。
7年ともなるとHack Uに参加した学生が社会人になり、中にはヤフーに入社してくれた方もいます。入社後は社員の立場でHack Uに関わり後輩のサポートに回るといったケースも多くなってきました。そんな元参加者の社員がHack Uの魅力を語った記事もありますので、ぜひこちらもご覧いただければと思います。
参考:学生向け開発イベントHack Uの魅力とは 〜 夏休みに開催決定!
Yahoo! JAPAN Hack Dayとの違い
ルールはほぼ「Yahoo! JAPAN Hack Day」と同じなのですが、一部異なる部分があります。
Yahoo! JAPAN Hack Day | Hack U | |
---|---|---|
出場対象 | どなたでも参加可能 | 小学生以上の学生 |
開発期間 | 24時間 | 約1カ月 |
発表時間 | 90秒 | 180秒 |
開発サポート | なし | ヤフー社員によるサポート |
これ以外にも共通のルールとして、「過去に作成したものではなく、期間中に新しく開発したもの」、「公序良俗に反しない作品であること」、「OSS、著作権などライセンスを遵守した作品であること」などのルールもあります。これらのルールを守ってもらいながら、自由な発想でものづくりをしていただきます。
5会場の最優秀賞作品を紹介
Hack Uでは以下4つの観点で優れた作品に対し表彰を行っています。
- 新規性(技術や組み合わせのオリジナリティがあるか)
- 技術性(利用している技術は高度か)
- 発展性(将来どの程度の波及効果が期待できるか)
- 再現性(アイデア、プレゼンテーションだけではなく実際に動くものがあるか)
これらの観点で総合的に優れ最優秀賞を獲得した作品を紹介します。
東京会場
- 作品名:ShowTime
- チーム:スパークジョイ
プレゼン中の発表者の動作をPCカメラで認識し、あらかじめ定義されたポーズを検出すると効果音やスライド操作を行うアプリケーション。ポーズ検出にはOpenPoseを活用、ポーズと効果音などのひも付けを行う設定画面も使いやすく実装されていました。 またこの作品を発表する際にも実際に起動させデモを兼ねた発表になっていて、挙動の精度や作品の魅力がよく伝わる内容になっていました。
名古屋会場
- 作品名:火の用心
- チーム:I can do it!
SNS上での意図しない炎上を防ぐために、投稿しようとしている文章や画像の炎上度を判定してくれるアプリケーション。実際の炎上事例を教師データに機械学習を用いて炎上度の判定を行っていました。
さらに工夫されていた点として炎上要素のあるネガティブワードに対してポジティブワードの代替案を推薦してくれる機能もword2vecを活用して実装されていて、ただの判定ツールにとどまらない完成度でした。
福岡会場
- 作品名:penny
- チーム:トリスアンドデル
LINEをインターフェースに貯金額の確認や、一定期間貯金がないと催促してくれるIoT貯金箱。コインの判定も手作りで実装されていたり、持ち主の顔認識をした上で貯金を催促したりと細部までよく作り込まていました。受動的なプロダクトを能動的に変化させるというとても面白いアイデアを具現化した作品だと思います。
大阪会場
- 作品名:落とすな時計
- チーム:A leak biz
プレゼン中の発話内容や聴衆の笑い声によって時間の進み具合が変化する砂時計。Raspberry Piをベースユニットにしてマイクから取り込んだ音声を解析、笑い声は周波数の高さから推測し、それらの結果にもとづいてサーボモーターを制御して砂の落ちるスピードをコントロールするという仕組みでした。
プレゼンテーションに着目している点は東京会場の「ShowTime」と同じですがアプローチが全く異なる作品でした。こちらも発表がデモを兼ねていて作品の魅力がよく伝わる内容になっていました。
仙台会場
- 作品名:Poprop
- チーム:ProjectWinter
軸となるワードを入力するとそれに関連するワードを次々と提案し図示してくれるアプリケーション。関連ワードの抽出はword2vecを使って実装されていました。
仕事でもアイデアを考える際にマインドマップやマンダラートといった手法を活用しますが、それを代替してくれるような活用シーンがよく分かる作品でした。また図示されたワード群はSVG出力が可能になっていて、考えたアイデアを人に伝えるところまで、このアプリケーションがどう使われるかをしっかりと思い描いた上で機能実装されていました。
利用技術の傾向について
プレゼン内容や作品の機能から推測できる範囲で各作品で利用されている技術要素を集計したので紹介します。推測も混じっているので正確ではないですが、学生クリエイターが興味を持っている技術のトレンドなどが垣間見えるのではないかと思います。
作品形態
Raspberry PiやArduinoの登場以降、ハッカソンの場で電子工作系作品を見る機会は急増しました。昨年末に開催した「Yahoo! JAPAN Hack Day」でも4割の作品が電子工作を絡めた作品でしたが、今年のHack Uはどうなのか、全112チームの作品を5種類に分類しました。
(1つのチームが電子工作と連動するスマホアプリを同時に開発するパターンなどもあるため合計がチーム数以上になっています。)
作品形態 | 作品数 |
---|---|
スマホアプリ | 42 |
Webアプリ | 36 |
電子工作 | 22 |
デスクトップアプリ | 13 |
その他 | 11 |
「Yahoo! JAPAN Hack Day」と比較すると電子工作作品の割合が少ないのは、どうしても費用がかさんでしまうためと思われます。電子工作にチャレンジしたチームでもなるべく費用を抑えるために市販のセンサーは使わずなるべく自作するなど創意工夫をしていました。 その他に関してはLINE BotやHololensアプリ、ChromeやVSCodeの拡張機能として実装された作品をカウントしています。実際にリリースしたときを想定して、ユーザーが使いやすい形態はなんなのかということがよく考えられていました。
言語や開発環境
言語や開発環境という観点では、Unityを採用しているチームが20チームと全体の18%を占めました。今回ARやVRなどのxR系の作品が19チームありその多くに採用されていたのと、xRやゲームではないツール系作品でも採用していたりと、採用背景としてクロスプラットフォームを目的としているというよりも、使い慣れた技術を駆使しているという技術の浸透具合を感じました。
またバックエンドにはPythonを採用しているチームが多かったのが印象的でした。一番多かったのはNode.js(Nuxt.js含む)でしたが次点がPythonでした。機械学習など他言語と比べて学習機会が増えてきているのではと推測しています。
まとめ
紹介した最優秀賞作品以外にも、すぐにでもリリースできそうな完成度の高い作品、高度な技術を駆使した作品、他の参加者を笑いの渦に包んだ作品と多くの素晴らしい作品がありました。発表会の様子はすべて動画で公開していますので、どんな作品があるのか気になった方や次回以降の参加を検討したい方はご覧いただければと思います。
参考:Hack UのYouTubeチャンネル
今回紹介した各会場の最優秀賞チームは12/14(土)・15(日)秋葉原で開催する「Yahoo! JAPAN Hack Day」にも招待し参戦していただくことになっています。こちらの発表会も動画配信を行う予定ですので続報をお待ちください。
また出場チームを絶賛募集中ですので一緒にものづくりを楽しみたいと感じた方はぜひご応募いただければと思います。
参考:Yahoo! JAPAN Hack Day 2019 ハッカソン 募集要項
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