こんにちは、Hack Dayプロデューサーの善積です。
ヤフーが例年開催しているテクノロジーイベント「Yahoo! JAPAN Hack Day」の決勝が、デジタルの日でもある10月10日に行われました。
Hack Dayはテクノロジーをもっと身近に、もっと楽しむための、お祭りのようなハッカソンイベントです。今回は「日本のデジタル化」をテーマに開催しました。
イベントの概要については予選のレポートに記載しているので、詳しく知りたい方はこちらの記事を先にお読みください。
本記事では、決勝の結果を振り返りつつ、初の予選・決勝開催を行った背景や結果について振り返りたいと思います。
決勝の結果
本記事を読む前にまだ決勝を見ていないという方は、上記のアーカイブ動画をぜひご覧になってみてください。
予選から2週間の追加開発期間を経ての決勝ということで、どのチームの作品も非常に洗練され、レベルの高い戦いとなりました。
顧客にインタビューを行って機能を追加するチームや、デザインを磨き込み使いやすさを追求するチームなど、それぞれの趣向が現れつつも、多くの作品が実際にリリースされ、誰でも触れるまでになりました。
そんなハイレベルな戦いを制したのは、チーム「もっちり」による会話をリアルタイムに自動でグラフィックレコード化してくれる『ぐられこや』という作品でした。
審査基準である「課題解決」「Hack」「Fun」すべてにおいて高い評点を獲得し、見事最優秀賞を受賞しました。
改めておめでとうございます!
デジタルの日に開催した背景
今回のHack Dayでは、最先端のテクノロジーを多くのクリエイターの方に使っていただき、その可能性を見いだすというチャレンジを行いました。これはHack Dayが、イベントとしての持続可能性を高めるとともに、より社会への貢献を実現するための一つの方法でした。今後もテクノロジーの可能性が広げることで、新たな事業提携の可能性に限らず、広報、採用などにもよい影響を与えられるイベントにしていきたいと考えています。
これは、前回3月に開催したHack Dayの記事に記載したものです。
イベントの持続可能性を高めるために、Digital Hack Dayでもテクノロジー活用を踏襲しつつ、デジタルが注目されるこの日に合わせて「日本のデジタル化」をテーマに開催することで、世の中からのイベントへの注目度を最大化し、Hack Dayの社会的な価値を築くこと、そして開発された作品によりスポットライトが当たることを目指しました。
またイベントの企画当時、デジタル庁(準備室)の掲げていた「デジタル社会形成における10原則」において下記の項目があったことから、民に限らず官においても、Hack Dayが日本のデジタル化にとって重要な存在であると示す良い機会と感じました。
- 浸透
・デジタルを使う側・提供する側双方への教育で、「わかりやすい」「楽しい」デジタル化を目指す
予選・決勝の2つに分けた理由
今回このような目的で開催を決めたHack Dayですが、より多くの人に見てもらうにあたって、解決する必要があったのが”配信時間の長さ”です。
例年のHack Dayでは、すべてのプレゼンと展示会、審査を合わせると4〜5時間ほど配信しており、お世辞にも気軽に見ていただけるものではありませんでした。
今回は予選と決勝の二段階フォーマットを採用することで、1時間に収まる番組を実現し、多くの人が気軽に視聴でき、かつ多方面の配信プラットフォームにも展開しやすくなりました。
そして「日本のデジタル化」というテーマを設定したことによって、初めてHack Dayを見る方にとっても、どういった観点で番組を観賞すればよいかが明確になりました。
番組の流れはMicrosoftが主催するImagine Cupを参考にし、プレゼン前に導入として作品開発の背景やチームについて動画で紹介するなど、視聴者がより理解を深められる演出を行いました。
結果として、Twitterのイベントページでは400万人以上の方に、Yahoo! JAPAN内動画では600万回以上再生いただくことができました。
作品の持続可能性の向上
国を挙げずとも、ハッカソンの精神は世界中で同じです。参加し、人々と出会い、ネットワークを作り、アイデアを共有し、RedBullを飲み、ピザを食べ、交代で寝泊まりし、製品を実装し、ピッチを行い、そして運が良ければ勝利することもあります。しかし優勝したことはほとんど重要ではなく、数年後にハッカソンの優勝者を思い出す人はいません。あなたが作った友達とハッカソンの間に作成した思い出だけが永遠に残ります。
これは以前、社内向けのHack Dayに参加したPayPay社員による記事から抜粋したメッセージです。
ハッカソンはとても刹那的なイベントで、24時間など決められた短い時間で一気に熱量を持って作り上げるところがいいところでもあります。
一方で、Hack Dayがより社会的な価値を築いていくため、日本のデジタル化に必要な存在になっていくためにも、作品が世の中から求められるようになり、かつ持続可能になること、つまり「作って終わり」ではなく提供し続けることを支援する必要があると考えています。
これまでもヤフーでは、作品を持続的なものにするためにさまざまな取り組みを行ってきました。
スター育成プログラムとHack Day
そのひとつが2013年に開始された「スター育成プログラム」という社内ベンチャー制度です。
Hack Dayから生まれた作品が、社内ベンチャーとして事業化を目指すというもので、2014年にスター育成プログラムから「リッチラボ株式会社」が発足するなど、一定の成果を残したともいえる制度ですが、24時間でのプロダクトアウトが前提となるHack Dayと、ヤフーの社内ベンチャーとして求められる事業規模とを重ね合わせるのは難しいと感じています。
*ちなみに、この制度は形を変えながら現在も継続しており、さまざまなサービスを開発しています。
つくらずに検証することが主流に
事業という側面においては、IT市場の成熟によって世の中に求められるプロダクトの複雑さが増してきたこともあり、プロダクトそのものをできるだけ作らずに仮説検証を行い、事業化の判断を行うことが主流になってきました。
- 作らないものづくりで進める、非エンジニアPdMの仮説検証(外部サイト)
- MVP の作り方 とにかく雑に作る「手作業型 MVP」のススメ(外部サイト)
プロダクトの持続可能性のことだけを考えれば、むしろつくらないで始めたほうが生き残る確度は高いかもしれません。
つくることの楽しさを伝えたい
しかし、Hack Dayが「#つくるってたのしいね」を標語として掲げているとおり、私たちはプロダクトをつくること自体の楽しさを大事にしています。
アイデアを実装できることがイメージできた瞬間、ビルドしたプロダクトが初めて動いた瞬間、こだわったユーザー体験が実現できた瞬間、これらはものづくりにおいてかけがえのない瞬間であり、事業が成功することとはまた少し違う楽しさではないでしょうか。
持続可能性を最優先にするのではなく、つくる楽しさの先で作品が持続できる可能性を最大化することが、Hack Dayにできることなのだと思います。
ヤフーとしてなにができるか
将来的なリターンを求めない形で持続可能な作品を支援し、つくる機会を増やし、つくる楽しさを広めていくために、ヤフーが最も力になれる形は、その面の力を最大限活用して作品への注目を最大化することだと考えています。
まだまだ道半ばですが、Digital Hack Dayは、将来的にはお笑い芸人にとってのM-1グランプリ、高校球児にとっての甲子園のように、ものづくりが好きなエンジニアやデザイナーが目指したくなるイベントを実現していきたいと思います。
今後に向けて
今回初めての予選、決勝の二部開催ということで、主に運営面において改善すべき点が多く見受けられました。
出場者や視聴者の声をもとに、次回の開催に向けて見直しを図っていきます。
また数字として現れる視聴数以上に、より多くの議論が生まれるようなコミュニケーション設計、実際のアクションにつながるような関係者の巻き込みを実現していきたいと思います。
次のHack Dayも、ぜひ楽しみにしていてください!
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