テクノロジー

2021.01.27

ヤフーで働きながら新規事業に挑戦している話

こんにちは、ヤフーで広告システムを開発している大石純平という者です。
今回は私が、ソフトバンクイノベンチャーという新規事業提案制度を使って新規事業に挑戦している話をします。

現在作っているもの

新規事業で「BAKOON!」(バコーン)というサービスを作っています!

これは、ライブ配信型のオンラインダンスエクササイズアプリで、インストラクターがアイドルであるということが特徴です! モーションキャプチャ機能を使って運動量を測ったり、アイドルとコミュニケーションを取りながら、一緒にダンスをしてエクササイズができます。

現在キャンペーン期間中で2月末まで無料で利用できるので、この機会に私たちのサービスを体験してみていただけるととてもうれしいです!

BAKOON!

社内起業制度へ参加するきっかけ

ヤフーでは「ソフトバンクイノベンチャー」という社内制度へ参加でき、ソフトバンクグループ社員なら誰でも新規事業を提案できます。アイデアの実現に向け、事業全般に関する相談から専任の担当者によるメンタリングなどといった様々な支援を受けられます。

その制度への挑戦を考えていた友人がチームへ誘ってくれたのがきっかけで、私はエンジニアとして加わることになりました。サービスをゼロから立ち上げて、作り上げていく経験を積めることはなかなかないので、良い機会だと思い参加を決めました。

事業化までの道のり

ソフトバンクイノベンチャーでサービスを事業化するまでにはいくつかの関門を突破していく必要があります。
ここではそれらの関門について私たちが行ったことを書き記します。以下の図は、それぞれの関門を図示したものです。事業化までの道のり SBイノベンチャー株式会社(外部サイト)より

1. PSF(Problem Solution Fit):

PSF では、課題設定に対しての解決策を提示し、課題と解決策がフィットしているのかを最小限のプロダクトで検証します。

  • どのような人に向けたサービスなのか
  • 課題の特定とその解決策を見いだせているか
  • サービスの内容・コンセプトは何か
  • 市場戦略はどうか

などを自分たちで考え、私たちのサービスがどのような価値を市場に提供できるかを実際に検証していきました。PSF の検証段階では、既存のサービスであるZoom、YouTube Liveを用いて、課題解決に価値があるのかに重きをおいて検証をしました。この段階で

  • 課題: おうちで楽しく簡単に運動を行いたい
  • コンセプトと解決策: アイドルと一緒にダンス or フィットネスを行う

が決まりました。

2. 最終審査:

この審査では

  • PSF の検証結果
  • 実際に市場にフィットしているものなのか
  • マーケットのなかでの勝ち方を見い出せているか
  • 事業検討していけるチームか

などを見られます。

3. SPF(Solution Product Fit):

SPF では、最終審査で提示した勝ち筋の検証ができるような最低限のプロトタイプを作り、検証を回していきます。

※ SPFの前に、自分たちの事業の市場機会と勝ち筋の仮説をしっかり見極め、今後の検証プランを立てるフェースがありますが、ここでは割愛します。

ソフトバンクイノベンチャーの最終審査に合格すると検証予算(事業準備金)が与えられ、業務時間の一部を使って提案した事業に取り組めるようになります。その中で、自分たちが提示した課題(おうちで楽しく簡単に運動を行いたい)を解決するプロダクトを実際に作っていきます。

メンバーと話していく中で「双方向性」「一緒にやっている感」を大事にしたいという意見が出たので、モーションキャプチャーを用いたコミュニケーションを模索することにしました。また、いかに素早くプロトタイプを実装し改善していくかが重要だと考えていたので、配信機能とモーションキャプチャーで双方向のやり取りができる機能にしぼって、1カ月ほどで作成しました。そのプロダクトを用いた検証も行いました。

4. PMF(Product Market Fit):

PMF では、 SPF での検証結果をもとに、プロダクトがマーケットに受け入れられるかの検証を行います。このPMF での検証結果をもとに、事業化承認を得られると晴れて事業化となります。

私は今はこの段階にいて、事業化を目指して日々プロダクトを磨き込んでいます。

エンジニアとして取り組んでいること

プロジェクトの込み入った内容について話そうとすると熱が入り、それだけでかなり長くなってしまいますので、新規事業に挑戦する上で使用した技術や重要だと感じたことについてフォーカスして話していきます。

初めて使用したツールや言語

  • フレームワーク: React、React Native
  • 言語: TypeScript
  • モーションキャプチャ技術: TensorFlow.js
  • mBaaS: Firebase
  • ライブ・リアルタイム配信のための SDK: Agora
  • モデル設計: CQRS

などを利用してサービスを作成しています。どれも主務の業務では使用したことがない技術です。今回はその中の一つだけを取り上げてお話しします。

CQRS(モデル設計)

今回 Firestore を利用するにあたって、 CQRS というモデル設計を適用しました。

CQRS: コマンドクエリ責務分離。書き込みと読み込みの責務を分離することでデータの流れを一方方向に固定するデータベースの構成。

データを write する部分とread する部分が分離しているので、読み取り用のクエリが単純になったり、保守性が向上したのを開発中に実感しました。Firestore で CQRS を実現しようとすると cloud functions の利用は必然となり初期投資が大きくなりがちですが、実際に開発していく中で私は何度も CQRS の特性に助けられました。

アイデアの検証を何度も行い、ユーザーの体験を想像することの重要さを知った

事業化までには、プロトタイプを素早く作り、勝ち筋の検証を何度も回して行くことが求められます。サービスのコアが決まった後は、実際にそのアイデアがユーザーに刺さるものなのか既存のものを使って検証を回しました。その検証を回した後は、アイデアを再び練り直し、すぐまた検証を回せるように少しずつ実プロダクトに反映させます。そのアイデアが課題を解決するものだとは限らないので、実装したあとでいらなければ消し、修正が必要であればすぐ修正を行っていくことが必要です。

課題を解決するためのアイデアはいくつも出るのですが、それらを実際にプロダクトに反映させるためには当たり前ですが、実装という過程を経なければなりません。すべてのアイデアを実装するのは現実的ではなく、取捨選択のセンスが試されます。手持ちのリソース(開発期間、検証期間、人的リソースなど)で、どこまでやるかどこまでやらないかを判断するのは毎回骨が折れる作業です。

基本的に主務の業務では、企画から開発・運用まで、バックエンドからフロントエンドまでを網羅的に担当することはないので、そういった産みの苦しみを経験できるのが新鮮でした。

新規事業チャレンジの経験が、本業の広告システム業務に生きるようになった

チャレンジをしていく中で本業に生かせているものを一つだけ挙げるなら、想像力です。特にユーザーを意識しながらサービスを作るということを考えられるようになりました。

主務の業務では、巨大な広告システムの一部を担当しているので、周辺コンポーネントやそこに関わっているメンバーへの影響は想像しやすいのですが、エンドユーザー(広告主や広告を見る人)に対する想像がなかなか働かないんですよね。新規事業に挑戦する上では、否が応でもエンドユーザーへの想像力を働かせる必要があるので、そこらへんの頭の使い方ができるようになってきた感覚があります。例えば、新規事業では、以下を念頭に置きつつ、ユーザーにとって良い体験とはなんだろうということを日々考え、開発していく必要があります。

  • 課題: 運動することがおっくうになりがちで、気軽に楽しく取り組めるものがないので習慣化できていない
  • 解決策: 私たちのアプリのUIを通してアイドルとダンスを一緒に行う

上記を踏襲して広告システムに対して当てはめると、以下のような課題や解決策を考えられるようになりました。

  • 課題: ユーザー(広告を見る人)が求める広告が出ていない。あるいは広告によって生活が豊かになっていない
  • 解決策: ユーザーが求める広告を深掘りして、生活が豊かになるような広告を出す

広告に関わる上で当たり前の事を言っているだけのような気もしますが、今まではこういったことを念頭において考えたことがなかったので、エンドユーザーへの想像力を働かせる第一歩を踏み出せたのかなと思います。

チャレンジできる環境について

新規事業にチャレンジする多くの人は副業などを行い、通常の業務時間とは別に時間を取る必要があります。この制度を利用すれば、通常業務の時間の中で新規事業にチャレンジする時間を工面できるので、挑戦をするのも自分の時間を使わなく済むというメリットがあります。

私は基本的に業務ではバックエンドの開発しかやってこなかったので、フロントエンドやサービス全般にまたがる施策を進められるので良い経験をできているなと思います。また、技術的なことに限らず申請業務や社外の人とのやりとり等も身近に感じられるので、泥臭い作業の重要さなども身にしみて分かりました。普段こういったことはエンジニアは対応することがないのですが、こういった地道な作業こそがサービスを支えるために必要なことなのだと思うようになりました。

主務の上長やチームメンバーの協力もあり、通常の業務に従事しながら、新規事業にチャレンジできているのでチームメンバーや上長に感謝しています。ヤフーでは、こういった挑戦をとがめる人はいないので、どんどん新しいことに挑戦できる恵まれた環境だなと感じています。


大石 純平
エンジニア
巨大な広告システムの一部を作っています。無駄を削るのが好きです。

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