テクノロジー

2021.05.10

スクラムガイドの変更に伴うヤフーのスクラムの変化

こんにちは。アジャイルコーチの荒瀬中人です。
スクラムガイドが約3年ぶりに更新されました。スクラムガイドとはスクラムについて書かれている唯一無二のガイドです。
スクラムの取り組みの中で活用できると思い、最新版のスクラムガイドに沿ったスクラムのフレームワークの各要素や目的をシンプルにまとめた1枚の概要図にしました。
Scrum概要図
私自身簡単に見直せるとともにセミナーなどでスクラム説明する際に活用しています。このブログを読んでくれている方のお役に立てればと思い、今回公開することにしました。
こちらからダウンロードください

さて、今回のスクラムガイドの変更点に“指示的な部分を削減(*1)”、“幅広い読者のために全体的に文章を簡略化(*2)”という文章があります。
私はこの内容をみてスクラムチームがより柔軟な意思決定しやすくなると思いました。
一方でよりシンプルになったことにより戸惑うスクラムチームがいるのではないかとも思いました。
そこでこの記事では、スクラムガイドの変更点がスクラムチームにどのような影響を及ぼしたかについて、私たちのスクラムチームの事例をベースにご紹介します。

スクラムイベントの変化

以前のスクラムガイドには、例として日々のデイリースクラムにて以下の3つのような質問について書かれていました。
スクラム実践初期、多くのチームがこれらの質問を真似てデイリースクラムを始められたのではないでしょうか。

  1. 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が昨日やったことは何か?
  2. 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が今日やることは何か? 
  3. 私や開発チームがスプリントゴールを達成する上で、障害となる物を目撃したか? 

しかし、最新のスクラムガイドからは、上記の質問は削除されています。
そしてスクラムガイドにはデイリースクラムの目的について以下のように書かれています。

デイリースクラムの目的は、計画された今後の作業を調整しながら、スプリントゴールに対する進捗(しんちょく)を検査し、必要に応じてスプリントバッグログを適応させること
出典:スクラムガイド

このように質問が削除されたことから自分たちで話し合うテーマを考える柔軟性が増したと感じています。
実際、私たちのチームではデイリースクラムでスプリントゴール達成のために必要だと思ったらなんでも話すようになりました。
例えば、以下のようなことを話しています。

  • 日々の活動による新たな発見について
  • 発見からより良い取り組みについて

  • さらにスプリントレトロスペクティブではスプリント内で起きた問題だけでなく
  • 取り組んだ経験からより良い活動につなげる

  • ための話し合いも行っています。

ここからはもう少し詳細にお話しします。

日々の活動による新たな発見について

スクラムチームの作業は、スプリントプランニングで計画した通り進むのが理想的だと思います。
しかし、実際に作業することでスプリントプランニングでは気づけなかったことや新しい発見をすることが多くあります。
例えば、新しい発見の一つにボトルネックがあります。
ここでいうボトルネックとはスプリントゴールに向けた作業や活動のフローに影響がありそうなものです。
例えばAの作業が完了したら、Bの作業に着手するという順番に取り組む作業があるとします。
作業と作業の間や作業自体に注目すると

  • 連続した作業のAの作業が完了しているにもかかわらず、すぐにBの作業に着手できない場合や準備を要する
  • 作業内容の理解力にメンバー間の差がある
  • 作業の処理能力にメンバー間の差がある

上記のような、作業と作業の間の待ち、作業理解力や処理能力に差がある場合に、ボトルネックが発生しやすいと私は感じています。
チームはこのようなボトルネックを発見したらデイリースクラムで共有します。

発見からより良い取り組みについて

発見したボトルネックがスプリントゴールに影響があるとチームが判断した場合、デイリースクラムの中で改善に向けた話し合いも行うようになりました。
ボトルネックに対する解決方法について、スプリントゴールまでのフローを俯瞰した上で最もシンプルな取り組みを選択します。
以下はシンプルな取り組みに対する私たちのチームの考え方です。

  • ルールや運用フロー、管理物を極力増やさない
  • メンバーのコミュニケーションによって解決できる方法を考える
  • チームが主体的に活動しやすい場をつくる

ルールや運用フローや管理物を増やすと、一見最初のボトルネックは改善したように見えます。しかしプロセスがさらに複雑になったことで、メンバーの責任が分散され、チームの対話や協働が減ってしまい、新たなボトルネックを生む恐れもあります。
またシンプルな取り組みは実践した効果や影響を検査しやすいです。
以上の理由から私たちはチームの活動方針や働き方を変える場合、複数のアイデアの中からもっともシンプルな取り組みを選択しています。

取り組んだ経験からより良い活動につなげる

スプリント中に起きた問題はスプリントレトロスペクティブで話し合うというチームも多かったのではないでしょうか。私たちのチームではデイリースクラムを通して実施したシンプルな取り組みの結果について、スプリントレトロスペクティブで話し合っています。
もちろん、スプリント中に起きた問題について話し合うこともありますが、大部分の問題はデイリースクラムの中で改善に向けた取り組みを実施済みなので、この場では取り組んだ結果やそこから学んだことを中心に話し、次のスプリント以降に向けた取り組みの継続実施、活動方針や働き方を決めてます。
経験したことから意思決定するのは納得感も高く、「おそらく◯◯だろう」、「たぶん◯◯だと思う」などの憶測による議論も減ります

まとめ

今回の進め方の変化からチーム内のコラボレーションが増したと感じてます。課題やボトルネックを発見したらすぐにZoomやSlackを通してコミュニケーションし解決するようになりました。
また、改善に向けたチーム内の事前の決め事が減りました。日々いろいろな取り組みを経験し、チームにとってより良い取り組みだけが自然と浸透しました。
ここまで変わったことを話しましたが、今回のスクラムガイドの更新以前から一貫してリーン思考と経験主義を特に重要視して取り組んでいました。
無駄を省きシンプルな改善を繰り返す、経験に基づいて意思決定する。そして、日々経験学習し、自然とより良い働き方に変化する
スクラムガイドが更新されたことにより、これらの方針での活動がより進めやすくなったと感じています。
今回は取り組みの一部をご紹介いたしました。またどこかの機会で他の取り組みについてもご紹介したいと思います。
ぜひ皆さんのスクラムの活動に、今回作成したスクラム概要図をダウンロードしてご活用いただければと思います。

今回のスクラム概要図作成にあたり、アジャイル開発の推進チームやコミュニティの以下メンバーにレビュー協力いただきました。改めてお礼を申し上げます。
榎本 明仁さん、荻野 周紫さん、高坂 博昭さん、白鳥 航亮さん、杉 西紀さん、鈴木 美穂さん、中井 菜子さん、中村 貴光さん、長岡 実さん、西山 慧さん


*1指示的な部分を削減

スクラムガイドは時間がたつにつれて少し指示的なものになっていた。2020年版では、指示的な表現を削除または緩和して、スクラムを最小限かつ十分なフレームワークに戻すことを目的としている。たとえば、デイリースクラムの質問の削除、PBI(プロダクトバッグログアイテム)の属性に関する記述の緩和、スプリントバッグログにあるレトロスペクティブのアイテムに関する記述の緩和、スプリントの中止のセクションの削減などを実施した。
出典:スクラムガイド

*2幅広い読者のために全体的に文章を簡略化

スクラムガイド2020年版では、冗長で複雑な文章とITに関する記述(例:テスト、システム、 設計、要求など)を排除している。
出典:スクラムガイド


荒瀬 中人
アジャイルコーチ
ヤフー、関連会社、オフショア開発のアジャイル開発支援を担当。

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