あっどうも、社員Mです。
細かすぎて伝わらないSSL/TLSというタイトルにて、1年目とはとても思えない1年目の新人さんによる TLS Session resumption の技術についてアツい紹介がありました。
私は、このあたりの技術を片っ端から人柱することを専門に担当しています。本日はその結果について簡単にご紹介できればと思います。
※ 弊社で謎の人物キャラがはやるのは前CTOの明石さんの影響ということにしておきます(笑)。
はじめに
スマートフォンが利用するモバイルネットワークは応答時間が大きくなる傾向があり、ユーザー体験を向上させていくためには、応答時間とパケットの往復回数に着目した技術的な工夫が必要だと感じております。
TLS Session resumptionを利用することで、TLS接続においてユーザーとサーバーとのパケットの往復回数を減らすことができ、高速化が期待できるという話がありましたので今回取り組んでみました。
TLS Session resumptionの前に取り組むこと
ユーザーとサーバーの通信コネクションを1回の通信ごとに切断することは応答時間の大きなネットワークにおいては非効率です。
HTTP1.xのkeep-aliveなどを活用しユーザーとサーバーのコネクションを数秒から数十秒接続を維持することが重要です。
Apache Traffic ServerやNginxといったモダンで同時接続に強いソフトウエアではこの設定を行っても問題にならないので必ず設定を行いましょう。
※ Apache httpdは、アプリケーションを実装するコンテナとしてはとても便利なのですが、同時接続の数だけプロセスやスレッドを消費するモデルのため、膨大な接続を処理するEdgeとしては非効率といわざるをえないでしょう。
TLS Session resumptionの効果
TLS Session resumptionを導入することで、keep-aliveなどによるコネクションの持続でカバーできないような再接続のケースに対して効果が期待できると考えました。
私が所属するチームで導入したTLSのSession Cacheによるセッション再開の仕組みについて簡単に説明します。
- システム構成
2つの拠点のデータセンターにそれぞれロードバランサーを2セットづつ配置し、セッション情報をデータセンター単位で共有する構成としました。
また、今回の測定において、セッションを再開するための有効期間は2時間とし、Session Ticketによるセッション再開を利用しないものとします。 - 効果
TLSの接続の40%から45%に対してセッションを再開することができました。
キャッシュの共有範囲を小さくしたらどうなるか
上記の構成は、セッションを再開するために必要な情報を共有するキャッシュシステムがスケールアウトするという前提に基づきますが、大規模に利用する場合は、これらのサーバーは大量の接続を処理するため、キャッシュシステムやネットワークトラフィックについても考慮が必要です。
そして、それらのシステムがスケールアウトしなくなる状況が発生した場合への対応も検討する必要があります。
仮にこのような状況が発生した場合には、セッション情報を共有する範囲をLBの単位といった小さな単位にしていく方法が考えられますが、このアプローチはセッション再開する確率を低下させる可能性があります。
なぜなら、ブラウザーが再接続する際にDNSに問い合わせを行い、返却されたIPアドレスが前回接続したロードバランサのIPアドレスと異なる可能性があるためです。
私の所属するチームの別のシステムにおいて、セッションの共有範囲を小さくした上でテストを行ったところ、TLSの接続の20%しかセッションを再開することしかできませんでした。
このような状況が発生した場合、キャッシュシステムをスケールアウトするように作り直すことも大切ですが、データセンターが3つ、4つと増え続けた場合には同様に再開率を低下させる可能性があり完璧ではありません。
この点については、Session Ticketによる再開を組み合わせて利用していく必要があるのではないかと考えております。また将来的にDNSを利用した広域分散が実現できないか調査と検討をしていきたいと思っております。
2015年度にやりたいこと
私の所属するチームでは、今回取り上げたTLS Session Resumptionの以外にも、SPDYやOCSP Staplingといった技術を既に利用しております。
そして、今年度は、TLS Session Resumptionの効果の向上やHTTP/2の導入を本格的に進めて行きたいと考えております。
これらの取り組みについて、次の機会にご紹介できれば幸いです。
以上です。ありがとうございました。
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