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テクノロジー

ヤフーのIPv6への取り組み Continue: World IPv6 Day を終えて

IPv6 logo

こんにちは。IPv6 プロジェクトのスタッフです。

2011年6月8日午前9時から 24時間World IPv6 Dayが行われYahoo! JAPAN もこのイベントに参加し、Yahoo! JAPAN トップページhttps://www.yahoo.co.jp/を IPv6 でアクセス可能の状態としました。

IPv6 プロジェクトでは、トップページへの対応と同時に、これまで行ってきたビーコンを用いたアクセス状況調査を行いました。今回の Blog では、IPv6 Day 前と IPv6 Day での二点でのアクセス調査のデータの比較を中心にご紹介したいと思います。

ビーコン調査おさらい

以前もご紹介していますが、ビーコン調査についての概要をご説明します。
ビーコン調査は、

  • A のみ (v4)
  • A と AAAA (v46)
  • AAAA のみ (v6)

を持つ 3つの FQDN を利用し、それぞれにごく小さなオブジェクト(ビーコン)を設置し、そこへのアクセスを調査しています。ビーコンのサイズは実サイズで 43バイト、HTTP リクエストにもよりますがレスポンスサイズは大きくても約500バイト程度となっています。

これら 3つのビーコンに対して

v4 v46 v6
○(v4) × v6 にアクセスに来ない、v6 の影響を受けないアクセス (主に 4-4-0 や v440 と略します)
○(v4) v4 を優先する v6 接続可能なアクセス(主に 4-4-6 や v446と略します)
○(v6) v6 を優先する v6 接続可能なアクセス(主に 4-6-6 や v466 と略します)
× A/AAAA 両方を持つサーバへの接続に障害が起きたアクセス(主に 4-0-* や v40* と略します)

これら以外のアクセスパターンは不明もしくは不完全なデータとして扱っています。

また、ビーコンでの調査は World IPv6 Day で IPv6 対応を行ったhttps://www.yahoo.co.jp/のみではなく、Yahoo! JAPAN が運用する Web ページで行われています。

アクセスパターン集計

アクセスパターン別の IPv6 Day 前と IPv6 Day 当日の比較グラフを示します。

それぞれが示す割合と、変化率は

アクセスパターン before(%) v6day(%) 変化率
v440 94.78% 95.42% +0.67%
v446 4.86% 3.79% -22.00%
v466 0.05% 0.50% +997.04%
v40* 0.18% 0.11% -42.50%
unknown 0.13% 0.19% +41.78%

となります。

v466 の増加が目立ちます。この要因の追跡を含め個々のアクセスパターンに対する解析を進めます。

アクセス元別による集計

アクセス元で集約し、集計を行います。アクセス元の調査は、v4 に対するアクセスのアクセス元 IP アドレスに対応する DNS の逆引き FQDN を用い、"." (dot) 刻みで右から二つ、xxx.yy.jp といったパターンに対しては 3つで集約します。また、逆引きを問い合わせて対応する FQDN を持たないものを unknown としてまとめ、上位200未満のものは others としてまとめています。

また、集約した Domain 名のいちばん左の文字列は、元の文字列と関係の無いアルファベットで置き換えています。ですので、たまたま実在する Domain 名があったとしても、それは実在のものとは関係ありません。

グラフは、アクセスタイプ毎の総アクセス数を1として各 Domain 名が占める割合でグラフ化しています。

アクセス元別による集計 v40*

傾向

一部の domain 名において変化率が-50% を超える状況があります。グラフで見える範囲で、AAC.ne.jp や AAH.ne.jp となります。逆に増加傾向にある domain 名では十分なアクセス数があると思われる範囲内では高くて +20% 程度となっています。

Domain 名 before(%) v6day(%) 変化率
AAA.ne.jp 27.76% 33.35% +20.17%
AAC.or.jp 8.75% 6.95% -20.54%
AAB.net 7.39% 7.50% +1.56%
AAD.ad.jp 6.80% 5.54% -17.98%
AAH.ne.jp 6.14% 1.59% -74.03%
AAJ.ne.jp 4.98% 1.37% -72.42%

このように、総じて減少傾向にあり、一部の Domain 名に対しては明らかな減少(-50%以下)があります。増加は大きくても 20% 程度であり、数%程度の増加がほとんどとなっています。

アクセス元別による集計 v446

傾向

驚くほど変化がありません。変化率の振れ幅も ±数% の範囲がほとんどであり、一部10%を超えるものがある程度です。

アクセス元別による集計 v466

傾向

ある単一の Domain 名(AAE.ne.jp)に対して劇的な変化がありました。変化率では約800%(779.13%)であり、約8倍となっています。また、ipv6day では AAE.ne.jp からのアクセスが v466 に対するアクセス全体の 9割を占めており、v466 が v6day 前に比べ 10倍の割合になっている主要因となっています。AAE.ne.jp の劇的な増加によって他のデータが潰されてしまっているので、AAE.ne.jp のデータを抜いたグラフを作成してみます。

この様に、多少の増減はあるものの劇的な変化はありません。また、前述したように v466 は総アクセスの 0.5% であり、その90%を占める AAE.ne.jp を抜いているので総アクセス数に対して 0.05%程度でしかありません。このため、絶対数として少しの変化でも割合として大きく表れてしまっています。

アクセス元別での考察

アクセス障害をもたらす v40* のアクセスパターンの減少は、いくつかのの Domain 名において -50% 以下の変化が起きたためと考えられます。これは、その現象をもたらす何かしらの対応が該当 Domain 名を持つネットワークで行われたと推測できます。

また、v466 のアクセスパターン、つまり Native での IPv6 接続が 10倍となったのは、特定の Domain 名での劇的な増加が確認されました。これは該当Domain 名を持つ特定のネットワークにおいて、IPv6 に対する適切な対応が行われたものと推測できます。

その他の Domain 名では特筆すべき変化は確認できませんでした。

IPv6は遅い?

さて、World IPv6 Day の直前やその期間において各種報道が行われ周知が行われた後、"IPv6 に対応するとWeb ページアクセスが遅くなるのではないか ?" といった懸念が多く聞かれました。そこで実際どうであったかを調査してみます。

ビーコン調査において、v46 に対するビーコン取得にかかった時間をグラフ化します。調査対象は、v446 および v466 のアクセスパターンに対して、v6 のビーコンを取得しているアドレスから Teredo/6to4 のアドレスを持つものとそれ以外を分離してグラフ化を行っています。

v4 tunnel v446 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由と思われるもの
v4 native v446 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由ではない思われるもの
v6 tunnel v466 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由と思われるもの
v6 native v466 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由ではない思われるもの

横軸をビーコン取得にかかった時間(ミリ秒)を0から1500 (1.5秒)の幅で、縦軸を総アクセスに対する10ミリ秒単位での集計値の割合とし、これらをプロットし、2区間移動平均で近似した曲線を引いてみます。

また、ビーコンのサイズは前述の通り大きくても約500バイト=4kビットのサイズで、モバイルといった比較的細い回線、例えば64kbps であっても、オーバヘッドを考慮しても転送に100ミリ秒弱程度しかかかりません。

ビーコン取得時間分布(before)

傾向

v4 tunnel(v446 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由と思われるもの)での分布がやや遅く、500ミリ秒辺りから顕著に山が出来始める傾向があります。

ビーコン取得時間分布(ipv6day)

傾向

before 同様に v4 tunnel(v446 で v6 ビーコンの取得の元アドレスから Tunnel 経由と思われるもの)での分布がやや遅く、500ミリ秒辺りから山が出来始める傾向がありますがありますが、この山は before に比較し明らかに小さくなっています。

ビーコン取得時間での考察

明らかな傾向として v446 というアクセスパターンでの tunnel 経由でのアクセスにおいて、ビーコンの取得が遅れるという現象が確認できます。ただし、この現象は before の時点では顕著ですが、v6day では改善が見られます。

推測として、v40X で見られた一部ネットワークの施した対応によって、接続が遅延するといった現象が改善されたものではないかと考えられます。

また、v6への対応によって接続が顕著に遅れるという事は目立って起きるわけではなく、v6 が利用できる環境においては v466 で native で接続された環境が最も遅延が少ないという事が確認されました。

その他集計

以上の集計の他に、v446/v466 のアクセスパターンでの v6 に対するアクセスのアドレスから Teredo/6to4/Native を分け、集計を行い、また、それぞれのアクセスパターン毎にメジャーな OS を分類して集計を行いました。

IPv6 アドレス調査(tunnel/native)

利用 OS 調査

終わりに

接続において障害を引き起こすと考えられる v40* のアクセスパターンでの減少は、いくつかのネットワークにおいて顕著な減少が確認され、全体のアクセスに対する障害の発生率を下げていると考えられます。この対応は、アクセスに対する接続遅延の縮小という現象にも繋がっているとみられ非常に効果的であるものと考えられます。

また、v466 といった v6 接続に対する対応は、ある特定のネットワークにおいて劇的な増加がみられ、今回の調査において特筆すべき現象となっています。このように、インターネットにおける v6 対応に対する影響の不具合と思われるものは減少し、v6 そのものへの接続性が増加している状況が調査によって確認する事が出来ました。

Yahoo! JAPAN においても、今後このような調査を継続しつつ、今回の調査にあるような v6 への前向きな状況の変化に貢献したいと考えております。

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