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テクノロジー

ヤフー式新人研修 〜 フルオンラインでエンジニア研修を作った話

こんにちは。システム統括本部で技術研修の設計・運営をしている酒井です。

ヤフーでは新入社員が配属後も業務で協力しあえるよう、同期同士の関係構築を研修のゴールのひとつとしています。しかし昨年は、新入社員の研修をフルオンラインで行ったために、そこに課題が残ってしまいました。今年は、いかに関係構築ができるよう改善できるか? がポイントの1つでした。

この記事では、2021年4月から6月にかけて実施した2カ月半の研修での工夫を、カリキュラム内容と新入社員の声もまじえて紹介していきます。よかったら最後までお付き合いください!

【目次】

  1. 狙いと課題
  2. 研修の流れとカリキュラム
  3. コミュニケーションのために工夫したこと
  4. 新入社員と運営が、ともに作る研修
  5. おわりに

狙いと課題:研修を通じて、今後も協力しあえる関係性を築く

研修の運営をしている私たちは、例年、同期との横のつながりを大事にしてほしいと伝えています。同期とつながりを築けば会社生活が楽しくなるだけでなく、研修中も配属後もわからないことを聞きあったり、お互いが刺激となり成長したりできるからです。

新入社員向けの研修には「技術スキルの基礎を習得する」「自ら学ぶ力を身につける」など、いくつかのゴールを設定しています。そのうちの1つに、研修を通じて同期同士で助け合い、今後も協力しあえる関係性を築くという趣旨のゴールもあります。

しかし、昨年、これらのゴールの達成度を研修終了後にアンケートで聞いたところ、関係性を築くというゴールは他よりも低めの結果となりました。「オンラインだったため質問しづらかった」「リモートのため発言の機会を逃すことがあった」などのコメントがあり、見知らぬもの同士である新入社員の研修のフルオンライン化には、まだまだ課題が多いと痛感しました。

2021年もオンラインで実施する方針となったため、オンラインであっても、さらにコミュニケーションをとって関係性を強化してもらう目的で、大小さまざまな施策を考えました。

ヤフーでの研修の流れとカリキュラム

コミュニケーションの話の前に、まずは研修の流れとカリキュラムをご紹介します。
新卒採用された社員を対象としたエンジニア研修では、Webアプリケーションの開発ができるようになることを目指します。

研修の流れ

例年、「一般技術研修」でWebエンジニアとしての基本の技術を学んだあと、「社内技術研修」でヤフー内で利用しているプラットフォームなどを学ぶ、という流れで構成しています。

  • 一般技術研修: JavaやLinuxなど、開発の基本となるプログラミング言語と、Webアプリケーションの実行環境となるサーバの基礎をインプットし、その知識を演習でアウトプット
  • 社内技術研修: 社内のプラットフォームに精通している先輩社員からその用途や利用方法をインプットし、一般技術研修で作ったWebアプリケーションを社内プラットフォームで動かす演習でアウトプット

研修の流れは以下のようになっています。
基礎を学び、演習で実践する、というサイクルを繰り返す流れです。

研修スケジュール

カリキュラム

研修で学ぶ内容を一覧にまとめてみました。オレンジ色が一般技術研修、緑色が社内技術研修で学ぶ内容です。
研修期間は2カ月半しかないため、この内容を基礎から応用まですべて網羅しているわけではありませんが、Webアプリケーションを開発するための基礎的な技術を習得することをゴールとしています。

カリキュラムの図

この中からピックアップした主な科目でどんなことを学んだかを、以下の表にまとめました。
ヤフーではサービスごとに最適な開発言語や環境を利用していますが、新入社員向けの研修には、社内で標準的に利用されている開発言語やサーバ環境を重点的に取り入れています。

学習内容表

コミュニケーションのために工夫したこと

では、コミュニケーションに関する施策についてのお話に戻ります。受講者に好評だった以下の3つの施策を中心に紹介します。

  • 「偏愛マップ」でコミュニケーションのきっかけ作り
  • グループでの振り返り
  • グループでの演習

「偏愛マップ」でコミュニケーションのきっかけを作る

研修の初日のオリエンテーションのあと、「偏愛マップ」を作成するワークを行いました。
「偏愛マップ」は、自分が大好きなもの(「偏愛」しているもの)を1ページに書き並べたマップです。
さまざまな自己紹介の方法がありますが、お互いをより深く知るだけでなく、偏愛対象に共通点があれば会話のきっかけにもなるため、この方法を採用しました。

偏愛マップサンプル
※ 運営メンバーの偏愛マップ

4〜5人ずつのグループに分かれ、自分のマップについての質問に答えるまでを1セットとし、グループをシャッフルして2セット行います。新入社員は170人以上いるため、全員というわけにはいきませんでしたが、コミュニケーションのきっかけになったと思います。

以下のように、私たちが想定していたよりも広い範囲で、偏愛マップを利用していたという声がありました。

偏愛マップ作成時のグループワークだけでなく、以降のグループワークの最初の自己紹介などでも流用し、会話の取っ掛かりとして活用しました。
最初からずっとリモートワークだと、研修の内容以外の話をするきっかけがつかめないので、とてもありがたかったです。
雑談をきっかけに、研修の内容に関しても話しやすい雰囲気ができていたように感じるので、実際の業務においても雑談は重要なのではないかと思いました。

偏愛マップ施策によって、共通する趣味などを探すきっかけになり、新入社員同士はもちろん、初めて話す部署の先輩方ともとても関わりやすくなったと感じています。
同期であれば研究の話、部署の先輩方とはお仕事の話に偏った会話になりかねませんが、好きなものや趣味について深く話すことでその人についても深く知ることができるようになったと思います。
最近では、5分間コミュニケーション(1on1)の際には、自分の偏愛マップを添付したり、画面を共有して話すなどして活用し、効果を感じています。

個人ではなく、グループでの振り返りタイムを設ける

オンライン研修の長所として、リアルタイムで対話しながら質問ができることが挙げられます。
そこで、質問をしやすいように、口頭での質問はもちろん、Slackの質問チャンネルなども設けていました。

さらに、受講者同士でも疑問点や不明点を解消してもらえるように、1日の終わりや、演習中の決まったタイミングでグループで振り返りを行う時間を設けました。
講師に聞くよりも気軽に聞けますし、質問に答えることでスキルを定着させるという効果もある、と考えたためです。

新入社員からは、以下のような声がありました。

理解できていない点を気軽に聞き合えました。
また、理解できていると感じた点に関しても、自分なりの理解を言語化して共有することで、さらに理解が深まったり、間違いに気づいたりすることができました。

また、カリキュラムが変わるタイミングで「Good&New」を行いました。「よかったこと(Good)」や「新しい発見(New)」などをグループで共有するという取り組みで、カリキュラムごとにグループを変えていたため、新しいグループのメンバーと親交を深めることが目的です。

新入社員からは、以下のような声をもらっています。

意図的に雑談をする機会でもあり、きちんと話題を準備して話す練習になりました。

グループワークイメージ
提供:アフロ

配属後を考え、チームでの開発を経験する演習を行う

学んだ内容を実践する方法として、個人だけでなく、チームで行う開発演習も重視しています。
チーム開発演習は、プロジェクト管理の方法やチームでの業務の進め方、コミュニケーションの取り方などを経験することを目的としています。

初日はチームビルディングを行いました。「過去、現在、未来」を表す画像を持ち寄って紹介したあと、チームで話し合ってチーム名とスローガンを決めて1つの画像にまとめる、という流れです。チームで開発するにあたって、チームメンバーの人となりを知り、チームを作り上げていくためのワークでした。 チームごとにZoomのブレイクアウトルームに分かれて、チームで実施する開発を経験してもらいました。

新入社員からは、以下のような声がありました。

自分は演習によって学んだことを身につけていくタイプなので、講義内容や与えられた課題を実装することが最も効率の良い学習だと感じました。
また少人数のチームを一週間ほど組むことでお互いの顔と名前が一致するようになり、雑談の機会も生じるようになりました。

演習は実際に技術に関することについて話し合えるので、話題を特に考えず、話しやすいと感じました。
そして、グループワークは長く同じメンバーと毎日会えるので、一回限りのつながりより、有意義な関係を築けると感じました。

グループワークを通して感じたこととしては、何か1つのテーマへの取り組みに十分な作業時間を与えてもらえると仲良くなりやすいのかなということです。
作業も進めつつ多少の雑談もできるし、グループメンバーの人となりもつかめるのかなと思います。

社内技術研修の演習も、グループで行っています。
社内技術演習はチームでの開発ではありませんが、新入社員同士でわからないことを教えあうこと、先輩社員がグループごとにサポートをすることを目的に、グループ分けをしています。

サポートは、まずグループを担当する先輩社員が質問に答え、解決しなかったら、各技術の専門チームにJiraで質問するという流れでした。実際に配属されたあとと同じ流れになっているため、配属に向けたシミュレーションにもなっています。

演習の初日は先輩社員交流会を実施しました。グループごとに担当の先輩は決まっているため、その先輩たちと自己紹介や雑談をする時間でした。新入社員同士だけではなく先輩社員とコミュニケーションをとることで、配属に向けて実際の業務のイメージがより高まることを期待していました。

グループワークイメージ
写真:アフロ

新入社員と運営が、ともに作る研修

ここまで、新入社員同士のコミュニケーションのきっかけ作り、グループでの振り返り、演習のグループワーク、と紹介してきましたが、この期間すべてを通して、運営の私たち自身も新入社員とコミュニケーションがとれるように努めました。

事前に計画した内容を滞りなく実施するだけでなく、新入社員の声を聞いて、新入社員と運営が協力して研修を作り上げるために、アンケートや日報、週報、Slackなど、新入社員からの声をくみ取れるように、さまざまな機会を設けました。たとえば週報では、運営へのコメントを記述する場所を設け、コメントには必ず目を通しました。研修の進行上こたえることが難しい要望ももちろんありましたが、すぐに改善できそうなものは積極的に研修に取り入れるようにしました。一例をあげると、グループワークの実施タイミングやその長さについて要望を受け、講師と相談を重ねて変更するなどです。

おわりに

新入社員向けのエンジニア研修について、コミュニケーションという切り口で、主な取り組みについて書いてきました 。これらの運営の取り組みだけでなく、講師や新入社員がオンラインに慣れていたなどの要因もありつつ、関係性を築くというゴール達成度についてのアンケート結果を昨年より向上させられました。

研修は、オンラインであってもなくても、研修中の講師やサポーターのように新入社員から見える人だけでなく、企画段階のアドバイザー、教材の作成者、研修に利用する環境を整えてくれるエンジニアなどなど、たくさんの方に支えられています。
新入社員にも支えてくださった方々にも、胸を張れる研修になるよう、今回書ききれなかったことも含めて改善をしていきたいと思っています。

ヤフーへの入社に興味をもってくださった方は、ぜひ採用情報もご覧ください!

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  • 学びがある
  • わかりやすい
  • 新しい視点

ご感想ありがとうございました


酒井 三保子
技術研修の設計・運営
エンジニアがステップアップできる研修を作ることが目標です。オンライン会議には猫も参加します。

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