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テクノロジー

クリエイターの情熱が着火点。組織や会社の壁を越えるヤフーのDevRel活動

Yahoo! JAPAN Advent Calendar 2020の8日目の記事です。

組織や会社の壁を越えるヤフーのDevRel活動

こんにちは。Developer Relations水田(@crispytaffy)です。

本稿ではヤフーにおけるDeveloper Relations(以下、DevRel)のお仕事と、今年クリエイターコミュニティ活動の中で実践してきたことについて紹介します。DevRel活動を身近に感じ、みなさんもDevRel活動に参加したり、クリエイターをサポートしたいと思ってもらえると嬉しいです。

ヤフーにおけるDevRelのお仕事

ヤフーのDevRelはCTO藤門が管掌する部門にあり、所属するクリエイターの社内外での活躍を支援しながら技術ブランディング活動をしています。DevRelというと一般的には自社プロダクトと社外開発者とをつなぐ技術マーケティングの役割ですが、ヤフーではクリエイターの才能と情熱を解き放つべく、次にあげる施策などを年間を通しておこなっています。

ここに挙げた以外の施策も含め、クリエイターには登壇や記事執筆、開発などの機会を提供しサポートしています。またクリエイター自身が上記DevRel施策の企画や運営に参加できる、Developer Relationsアソシエイト制度も設けているので、他のクリエイターの活躍を支えることも経験できます。

このように、サービス開発以外の業務機会を社員向けにオープンに提供し、情報技術を通じてクリエイター自身の成長と会社や業界への貢献をサポートするのがヤフーDevRelのお仕事です。

クリエイターコミュニティ「Bonfire」

現在私が担当するのは、クリエイター向け勉強会コミュニティです。ディレクターとして、東京オフィス勤務のエンジニアやデザイナーが運営する「Bonfire」をサポートしています。

Bonfireでは社内外のクリエイターが参加できるイベントを主催しており、iOSやAndroid、Frontend、Design、Data Analystなど8つの領域で活動しています。それぞれの領域にはコアメンバーがいて、テーマ決めや登壇交渉、イベント当日の運営から開催ブログの執筆などを役割分担しながらおこないます。DevRelはイベント全体のスケジュール管理や会場手配、動画配信などの運営タスク、領域をまたいだナレッジ共有などをおこない、イベントに関わる体験の質向上を図ります。

Bonfireの8つの領域

Bonfireは2017年11月にスタートしました。その当時から定めているバリューは「Be Elastic」「Beyond the Inside」「For User」の3つです。3年たった今でもイベントのテーマ決めなどのときに立ち返る原点です。イベント開催時のconnpassページの概要部分にBonfire立ち上げ時のブログへのリンクを貼っているので、ご覧になった方もいるかもしれませんね。

以下、そのまま転載します。

Be Elastic
Elasticには伸縮自在という意味があります。デバイスやプラットフォームが多様化していく中でも、価値あるサービスを提供していくため> には、特定の領域に縛られない柔軟さが求められると考えています。
Bonfireでは、柔軟さを伸ばせるような発表を積極的に取り入れていきます。

Beyond the Inside
活発なコミュニティを構築するために、個々のサービス・会社の域を超えて、さまざまな意見や取り組みが尊重されるべきだと考えています。
Bonfireでは、一つのテーマに対してさまざまな視点から発表を募り、それぞれの持論が磨かれて持ち帰れるようなイベントを開催します。

For User
技術やデザインに関する知識共有にとどまることなく、サービスが抱える課題の解決に活かし、ユーザーのためになるイベントが必要だと考えています。
Bonfireでは、サービスが抱える課題に基づくテーマを設定し、共感する人が集まりやすい場をつくります。

コミュニティの名前でもあるBonfireは、日本語で「大きなかがり火」という意味です。日常業務から少し離れてみんなでかがり火を囲むことで、ここでしか話せないことや新たな気づきがあるのではないか。各領域のクリエイターたちは時間をかけてテーマを議論し、登壇者を選定し交渉しながらイベントを作り上げています。

コミュニティとして今できることへの挑戦

これまでは、半期〜1年に1回ずつのペースで領域ごとのイベントを開催してきたBonfire。しかし、今年は状況が一変しました。新型コロナウイルス感染症対策として、2020年2月後半以降は参加者が一カ所に集まるオフラインでの開催を控えることになりました。

オフラインイベントの様子

コミュニティが大切にしてきたのはイベント参加者同士のつながりと交流です。セッション終了後の懇親会は登壇者や参加者、運営メンバーが活発に議論し、とても盛り上がります。オンライン開催でもオフラインイベントと同等の価値を作れるのだろうか。この課題は難しく、まだ解決できていません。その一方で、これまでとは違った新たな試みは始まっています。

ここでは2020年の振り返りも兼ねて、Bonfireコミュニティで4月以降に実践してきたことを抜粋します。

1. 一方的な配信にしない、参加者の学びを深める工夫

オフラインイベントでは懇親会で登壇者をつかまえて質問できます。ところがオンラインでは個別に聞くことが難しく、発信内容に対しても受け身になりがちです。そこで、登壇セッションが終わった後に30分の質疑応答タイムを設けました。質問ツールは、匿名で集められるSli.doやイベントハッシュタグ付きのツイートを活用しています。

最初は質問が集まらないのではないかと心配しましたが、毎回時間が足りなくなるほどです。イベント参加者向けのアンケートでも「質疑応答の時間を長くしてほしい」といった声も出ており、満足度が高いことがうかがえます。ただ、時間を長くするだけだと冗長でもあるので、今後は別の方法を用いたコミュニケーションを検討し追加する必要はありそうです。

また、8月に開催したBonfire Frontendでは司会を2名にしてみました。それにより進行役にゆとりが生まれ、セッション内容についてのコメントも増え、司会同士の掛け合いも生まれました。こちらもアンケートで満足度が高い理由に挙げていただきました。

2. 社内横断のデータコミュニティ立ち上げ

データ領域はBonfireの中でも新しいコミュニティです。Data AnalystとData Scienceの2グループがありますが、それ以外にもデータに関わるお仕事は多岐に渡ります。ヤフー社内でもデータ関連のクリエイターはあちこちに点在しています。そこで、社外向けのオンラインイベントのノウハウをためるためにも、まずは社内向けにイベントを企画してみることにしました。社内横断データコミュニティの誕生です。

4月からの半年で開催したデータ領域の社内向けイベントは全部で5回。いずれもデータと接点のある幅広い職種の方が興味をもって参加しやすいテーマを選びました。データにまつわる技術の全体像をつかむものや、データ可視化に関する書籍の輪読会などです。その結果、社内のいろんな部署から100名を超える参加者が集まり、今後も継続してデータコミュニティに関わりたいという仲間も増えました。

2020年上半期に開催したデータ領域の社内向けイベント一覧

ヤフーのデータコミュニティについては、ブログ「部署や拠点を超えた社内コミュニティを作る 〜 データコミュニティ設立と運営事例の紹介」に詳しく紹介していますので、ぜひ読んでみてください。

3. 社内勉強会をのぞき見する!?

先ほどのデータ領域のような企業内勉強会で、クリエイターたちがどんなことを話しているのか気になりますよね。ちょっとのぞいてみようというコンセプトで企画されたのが、デザイン領域で8月に開催したDesign LTです。もともと社内向けのLT会を企画していたのですが、実験的に社外に発信してみようと、途中から方向転換しました。

これまでBonfireが提供してきた価値をそのままオンライン移行するのが難しいと感じる中、全く別のコンセプトで社外向けイベントを開催できたことはワクワクしました。Bonfireで用いている配信フレームや登壇者全員がけんさくとえんじんのバーチャル背景を用いて個性もありつつ一体感を出すといった手法は、このイベントからの試みです。また司会が登壇した社員をニックネームで呼ぶ場面がありました。このときツイッターでアットホームさを感じてくれたと反応してくれた参加者もいて、登壇者同士の距離感の近さが固くなりがちなオンラインイベントの緊張感を和らげるという発見もありました。社内勉強会の雰囲気を踏襲していたからこそ気づけたポイントです。この経験があり、以降のイベントでは事前リハを行い、初対面の登壇者同士のつながりを深められるよう工夫しています。

4. バーチャルLODGEでイベント開催

もうひとつ番外編として挙げたいのが、バーチャルSNS「cluster」を使ったイベントWWDC Extended Tokyo 2020です。毎年弊社のオープンコラボレーションスペース「LODGE」で開催していたのですが、今年はオフライン開催ができないため、リリースされたばかりのバーチャルLODGEを活用してみることに。見慣れた場所にバーチャルで集まり、参加者と空間を共有したりリアクションし合えたという体験は、課題は多いものの、いつもの勉強会とは違うオンラインイベントの可能性を感じることができました。

WWDC Extended Tokyoの変化

クリエイターを支えるDevRelマインドは「面白がる力」

withコロナ時代といわれる中でクリエイターコミュニティがどんな価値を生み出せるのかまだ模索中ですが、今年を振り返るといくつもの挑戦ができていました。その根っこにあるのはクリエイターの情熱と、そこから湧き出るアイデアです。それをサポートするDevRelに必要なのは、そのアイデアを面白がることです。クリエイターの「挑戦したい」「やってみよう」という勢いを受け止め、面白がりながら周囲を巻き込み、実現するまでいいねいいねと根気強く背中を押し続けることだと思います。

このDevRelマインドともいえる「面白がる力」を発揮する際に、私自身が心がけていることが2つあります。

ひとつは、いかに複眼を増やすかです。同じテクノロジーでも、一人で見るのとみんなでいろんな角度から眺めるのとでは、その先の未来の選択肢の種類が違ってきます。課題やリスクにも立ち向かっていけます。クリエイターコミュニティ全体で複眼化を目指したいと思っています。そしてもうひとつは、会社や組織の境界線をはみ出るのりしろをいかに広げるかです。セーフティーゾーンを数歩はみ出るだけで、見える世界は変わります。Out of the box(常識にとらわれない)という言葉がありますが、常識の外側に可動域を作りチャレンジしてみることも、自分自身の可能性を広げることにもつながると考えます。

冒頭に、サービス開発以外の業務機会を社員向けにオープンに提供し、情報技術を通じてクリエイター自身の成長と、会社や業界への貢献をサポートするのがヤフーDevRelのお仕事だと書きました。最近では、このクリエイターという表現自体がすでに狭いのかもしれないと感じています。

これからも組織や会社の壁を越えて、情報技術で人々や社会の課題を解決すべく、「面白がる力」を発揮しながら未来に向けてアプローチしていきます。みなさんの挑戦したいこと、やってみたいことなどのアイデアも聞いてみたいです。今後オンラインでお会いする機会を楽しみにしています!

2021年1月に、Yahoo! JAPAN Tech Conferenceを開催します

最後にご案内です。2021年1月22日(金)にYahoo! JAPAN Tech Conference 2021をオンライン開催します。その中で「Casual Talk」として、ヤフーのクリエイターからの公募によるショートトークを用意しました。当日は登壇クリエイターとチャットでの質疑応答もできます。ぜひサイトからお申し込みください。

Yahoo! JAPAN Tech Conference 2021

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水田 千惠
Developer Relationsディレクター / FQ (Future Questions) 編集長
東京でBonfireを運営。個人活動では最新テクノロジーやガジェットを使った作品を制作するメイカーでもある。

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