2019年10月23日

デザイナーはプロダクトにどう貢献する? ヤフー・BizReach パネルディスカッションレポート

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デザイナーの田川佳奈です。事業を成長させるデザイナーは、多岐にわたるプロダクト開発の業務にどのように向き合っているか。

プロダクトデザイナー・デザインマネージャーとして活躍されている方々を登壇者に迎え、リアルな話をお伺いすべく「プロダクトを加速させるデザインの現場」をテーマに、ヤフー、BizReachの二社がパネル形式でディスカッションするイベントを開催しました。

今回は、株式会社ビズリーチから「HRMOS評価」を担当された大河原 陽平さん、「ビズリーチ・サクシード」を担当された米増 佳樹さん、そして弊社からは「Yahoo!カレンダー」デザインマネージャーの笹城戸、「読み放題プレミアム」デザイナーの田島が登壇しました。司会・モデレーターは弊社廣橋が担当しました。

また、今回のイベントでは株式会社ソフトディバイスのUI/UXデザイナーの久保田麻美さんがグラフィックレコーディングにてイベントの内容を可視化してくださりましたので、合わせてご覧ください。

グラフィックレコーディング

Q1 開発体制

グラフィックレコーディング

自己紹介の後、お題をもとにパネルディスカッションがスタートしました。「開発体制」について、どのようなチーム体制や、開発モデルでプロダクトをつくっているのかお聞きしました。 笹城戸さん

<笹城戸> 大規模開発の場合はウォーターフォール形式でプロジェクトを進めたり、日々改善していくべき箇所はアジャイル開発にするなど、試行錯誤しています。キックオフせずに50人規模のプロジェクトを回したら、うまく目線が合わずに途中でキックオフし直すという大きな失敗を経験しました。やはり、最初に意識をすり合わせることが大切ですね。

<田島> 日本チームとベトナムチームで開発をしています。言語の壁があるので、渡航して交流を深めました。一緒に食事をして言語を超えた理解ができました。ウォーターフォール形式からスクラム開発に変えたことで、戻りを減らすことができました。スクラム開発において難しかった点は、デザインタスクとエンジニアタスクのタイミングがずれて待ちが発生してしまったことです。遠距離チームでの作業だからコミュニケーション不足が背景としてあって、そこでスクラムを取り入れたことで、コミュニケーションが強制的に蜜になったのでうまく機能しました。

<大河原さん> 週でスプリントを回していますが、デザイナーが加わったスクラム開発は正直難しいですね。エンジニアとの関わり方と、スプリントが回り出した状態でデザインレビューをどうするかはまだ改善の余地があります。

<米増さん> スクラム開発は手段なのに目的化してしまい、失敗してしまいました。ビジネス開発職と合同でやっても、プロダクト開発職に絞って人数を減らしても、正しいスクラムを回すことはうまくいきませんでした。その結果を受けて、スクラム開発の残すべきメリットをみんなで議論しました。挙げられたメリットは、課題の優先順位の合意形成ができることや、目線を合わせ同じゴールに向かって議論ができること。そして、完了の定義が明確であることなどです。これらのメリットをメンバーで共有してから、あらかじめみんなでやりたいことを出してきて、開発内容を1時間で決定するようにしました。この形になってやっと開発が上手く回るようになりました。この形になるまで2年かかりましたね。

Q2 ナレッジの共有について

グラフィックレコーディング

経験やナレッジをどのようにチームに浸透させているか、先輩からどのように学んでいるかを伺いました。

<笹城戸> 難しい問題で悩みながら進めていますね。対面なのかチャットなのかを温度感を探りながら使い分けてナレッジを共有しています。

ビズリーチのお二人

<大河原さん> チームではデザインシステムなどでナレッジを共有しています。デザインシステムを通じて議論をし、ルールを決めることで属人化がなくなり、知見がたまってきています。デザイン業務には「Figma」を導入しました。制作過程の思考プロセスを可視化し、1人にナレッジが集中しないようにしています。

Q3 プロジェクトにおけるコミュニケーション

ビジネスサイドのメンバーへの意見の伝え方、デザイナーからのフィードバックのもらい方はどのように行っているのでしょうか。

ビズリーチのお二人

<米増さん> 一番は、対面で話すことです。ビジネスサイドに画面デザインを説明する時には、プロジェクトや施策の目的をすり合わせてから議論をしています。そうすると、デザインした個人に対する議論でなく、コトに集中して議論ができ、メンバー間での意思決定がスムーズにできます。他の職種の人からフィードバックをもらう時は素人目線でもいいからなんでも意見してと、説明しています。そうすると意外と素直に言ってくれます。まだプロジェクトメンバーが少ないフェーズなので、意思決定したいことがあるときはミーティングを設定せず、自席に「集合!」と言って集まってもらうこともあります。新規事業部ならではのスピード感で開発を進めるためには、時間と場所の調整すらコストとして大きいと思っています。その場で意思決定することを最も優先しています。

<田島> 遠隔の会議では言葉よりもホワイトボードに絵を描いた方が正確に意見が伝えやすいです。領域を横断できるデザイナーを目指しています。APIの話とかデザイナーが嫌がる話を積極的に聞くようにしていて、最低限ビジネスと話せる程度理解していますね。

<笹城戸> デザインはデザイナーだけのものではないので、領域を線引きせずに関わっていくべきですよね。

Q4 仕事のバランスについて

グラフィックレコーディング

プレイヤーとマネージャーのバランスの最適解はあるのでしょうか? マネージャーとして活躍されるみなさんの悩みをお聞きしました。

<笹城戸> 最適解はケースバイケースですね。 自分のマネジメント領域が広くなってくるにつれて、自分がプレイヤーになるとボトルネックになってしまうため、今は9割くらいはマネジメントをしています。一方ではマネジメントの時間が長くなることで、専門性が鈍くなってきてデザインの判断力が低下してしまうんですよね。自分ひとりの力ではついていけなくなる瞬間がある。適切な判断をするために、本を読んだり得意な人から深い知識を得たり学びかたの自体の学習をしました。

<モデレーター> 自分がプレイヤーとしてものを作りたい欲はどうしていますか?

大河原さん

<大河原さん> 最近はものを作りたい欲を煩悩だと思っていて。ボトルネックになってしまうのでものを作りたい欲を無くす努力をしています。後は他のことをする、料理とか! 笑

<笹城戸> マネジメントをデザインとして楽しむように、自分のモチベーションを高めて考え方をなんとか変える努力をしています。

Q5 事業貢献について

グラフィックレコーディング

プロダクトデザイナー、デザインマネージャーとして貢献できたと感じる事例をお聞きしました。

ヤフーの3人

<田島> 事業貢献ってなんなんですかね。私はわかりやすく事業に貢献できたというよりも、この事業ってなんのために行われているのかと意識しながらデザインをしていくことが事業貢献への第一歩だと思います。サービスの中で改善したい欲はたくさん出てきて、その中でもデザイナーとしての感性を持ちつつ、数字の裏付けをとりつつ、機能改善に取り組むことが貢献につながっていくのではないですかね。

<米増さん> デザイナーがどう評価されるべきかというのはどの企業でも共通の悩みだと思います。 新卒がデザインコンペで手練れのデザイナーをさしおいて勝つこともありますし。自分も、どうしてデザイナーの評価が難しいのかについて考えていた時期があって。自分なりの答えは、自分で課題を見つけるデザイナーが少ないから。デザイナーが1pxにこだわるのは、「ソリューションのプロフェッショナル」だからですよね。アウトプットで評価される、というのはある意味そういうことなのだと思います。ただ、課題に対してソリューションを作るだけでなく、他の職種の人が議論して見つけてくるような課題を、デザイナー自身で見つけられたらビジネス的にもより評価されるのではないでしょうか。課題を解決する人よりも、課題を正しく設定する人の方が事業の中で尊いですし、課題が見つけられれば後はデザイナーが得意なソリューションのフェーズに持ち込めますし。過去の経験でいうと、サービスの課題だと思う数字を見つけてきて、改善の企画立てからデザインソリューション制作まで自分で回したところ事業部長に評価されたことがありました。

Q6 プロダクトデザイナーのキャリアについて

グラフィックレコーディング

デザイナーの役割が広がる中で、今後、事業に関わる上でどんな活躍ができそうかお聞きしました。

<笹城戸> 5Gの普及でますますリアルな日常にサービスの接点が増えていきますよね。またサブスクリプションのように、良い体験によって継続利用していただくことがビジネスの前提になってきています。体験を作り込めるかつ、デザイナーならではの観察力でソリューションを可視化できる人は、どこでも活躍できるのではと思います。

<田島> ソリューションのプロフェッショナルだけでなく、課題を見つけてグロースさせる力のあるデザイナーが、今後は相性が良いと思います。

<大河原さん> これまでと同じままでは評価されないと思います。うちのチームだとエンジニアがFigmaでUIを組むこともあるので、UIデザインができるだけではデザイナーは活躍できません。今までの文脈では、プロダクトの中で良いアウトプットを作ることがデザイナーとされてきました。今後はビジネスに踏み込んだデザインをできる人が必要になってくると思います。

<米増さん> 事業会社のデザイナーとしてやることは時代や流行が変わっても2つだと思っています。1つはビジネスパーソンとして事業全体を俯瞰して見ながら、事業目標を達成するために何ができるかを考えること。もう1つはデザイナーとしてどこまでの精度の高さで自分の持ち場を守りきり、研ぎ澄まされたアウトプットを出せるかということ。この2点を意識しながら高速でPDCAを回すというのがデザイナーの役割だと思っています。他の人を巻き込んでコラボレーションして、自分で課題を見つけて、PDCAをぐるぐる回して解決するということが必要になるのだと思います。

Q&Aセッション

グラフィックレコーディング

会場の皆さんから募集した質問へ、登壇者の方が回答するQ&Aセッション。一番多かった質問は「新卒一年目の教育に対して」でした。

QAセッション QA

<笹城戸> 横のつながりが大事だと思っているので、新卒デザイナー全体で集まってデザインを学びアウトプットを出す機会をつくっています。同世代のライバル意識でモチベーションを保ってもらい、それをどう継続的に維持させていくかに重きを置いてプログラムを組んでいます。

<大河原さん> 新卒研修に関わってないので以前働いていた会社の事例になってしまうのですが、圧倒的な師匠のもとでひたすら1年間修行させていました。制作に没頭できる基礎を習得する機会をつくることは重要ですね。

<モデレーター> どれくらいの数をこなさせていたんですか?

<大河原さん> バナーなどなのでものすごい量で100個くらいですかね。師匠のレビューを受けてつらいというイメージです。師匠のクオリティーは圧倒的なので、違和感はなかったと思います。

次に多かったのは、 「デザイナーの事業貢献をどう数値に落としているのか」について。

<米増さん> 私のチームでは事業部全体の目標数値をそのままデザイナーの目標値にしています。デザインってバナーを100個つくるとかが目標になりがちですが、それで1%も事業が成長しないと価値がないと思っているので...。

<田島> 本部ごとにKPIがあり、それを達成するためにプロジェクトごとに切り出した目標をデザイナーがどう貢献できたかは数値を見ています。評価されるには自分で数値貢献を説明できないといけないですね。

<笹城戸> 短期的な事業KPIに引っ張られすぎないようなこともやろうとしています。去年中国の企業を視察した際のことが参考になりました。半分を事業KPIと半分はデザイナーとしての専門性で評価していたので、それを自部門では取り入れようとしています。直近ではなく、中長期的に成果のだせそうなデザイナーを評価できるのがいいですね。

<モデレーター> ぶっちゃけ、デザイン業務を数値に落とし込むってどうなの?と僕は思うのですがみなさんはどう思われてるんですか?

<大河原さん> そもそも自分も数値に落とし込むことは苦手で、マネジメントをするためにそもそも何を期待しているのかを明確に伝えるようにしています。それは多面評価としてエンジニアや関わっているプロダクトオーナーから数値をとるようにしています。個人的には足元にあそびを残しておきたいというマネジメントスタイルです。

<笹城戸さん> そもそも評価はサービスや職場形態によっても変わってくるので、マネジメントとはどうあるべきか柔軟に考え続けることが大切ですね。

最後に

イベントの後の懇親会でも活発に意見交換が行われていました。異なる2社のプロダクトを率いる方のリアルなお話を聞いて、刺激的なパネルディスカッションになったのではないでしょうか。私は4月に入社してプレーヤーとしてもまだまだですが、マネジメント層の方の悩みを聞いてとても新鮮に感じました。さまざまな課題解決のアプローチが網羅されているため、プロダクトマネージャーorこれからマネージャー予定の方はぜひこの記事を参考にしていただければと思います。

田川 佳奈

金融デザイナー

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