こんにちは。ヤフーで社内システムを担当しているデザイナーの森川です。
ヤフーのデザイナーと言えば、Yahoo!ニュースやYahoo!ショッピングのデザインを最初に思い浮かべると思いますが、ヤフーには、社内システムを作っている部署(システム統括本部)があり、13名のデザイナー(2019年8月現在)が所属しています。
性質上、表に出ることが少ないため、今回は社内システムを作っているデザイナーについて前半、後半の2回に分けて紹介したいと思います。
- 前半:社内システムをデザインするやりがい ~ デザイナーの環境と事例紹介(この記事)
- 後半:社内システム特化なデザインシステムのメリット 〜 ヤフー社内のデザインシステム紹介
ヤフーの社内システムとは
社内システムとは、ヤフーの従業員が普段の業務で利用する社内独自のシステムのことです。日報や出張申請など、全従業員が日々の業務で利用するものや、サーバー管理やリリース作業など、エンジニアがサービス開発で利用するものなど、さまざまな社内システムがあります。
以下は社内システムの事例です。
従業員の現在位置マップ
全従業員向け。社内のフロアから、話したい相手を見つけることができるシステムです。各フロアごとの混雑状況の確認もでき、すいているフロアで快適に仕事ができます。フリーアドレス化に伴い、リリースされました。位置情報マップの技術解説記事
技術情報ポータル
社内エンジニア向け。ヤフーのエンジニアが開発で必要となる技術情報の集約と技術サポートまでをトータルで支援するエンジニアポータルサイトです。サービスを開発する上で欠かせない情報がつまっており、ヤフーを支えています。
社内システムのデザイナーってどんなことしてるの
私たちのミッション
ヤフーには社内システムがたくさんありますが、せっかく良い機能があるのに、それが伝わりにくかったり、使いずらいUIで業務の効率化につながっていないものもありました。
そこで、社内システムのUI・UXの改善が、従業員の作業効率に大きく効果があると期待され、専属のデザイン部が発足したのです。
私たちのミッションは、「ユーザーに最高のサービスを届けるために、従業員の開発生産性を向上させる」ことです。
そのために、使いやすいUI・UXを提供し、従業員の業務をより楽にすることを目指しています。
このミッションを実現するための取組みをいくつかご紹介します。
社内プラットフォームのブランディング
社内システムのライバルは社外システムです。他社でも同じようなシステムが存在する中で、他社製品より使いにくい社内システムであっては、私たちのミッションを実現できません。
社外のエンジニアと同等以上の体験ができる環境を整え、ヤフーのエンジニアがヤフーの社内システムを使いやすい、信頼できる、と思ってもらえるように、従業員の社内システムに対するブランドイメージもあげていく必要があります。
ヤフーの社内システムは、数が多く、機能も豊富なため、単一のシステムだけではなく、全体を俯瞰した体験設計から、ロゴデザイン、UIデザイン、その訴求の仕方まで戦略的に組み立て、従業員が迷わず利用できるよう提供することもデザイナーの仕事です。
独自のデザインシステムの構築
ヤフーには社内システムが200以上あり、それを10人前後のデザイナーで対応していたので、業務効率化と品質担保は必至でした。そのため、社内システム開発用のデザインシステムを構築し、運用しています。
デザインシステムに関しては後半の記事で詳しく紹介します。
社内システムデザインのやりがい
システムのデザインは、キャンペーンやランディングページのサイトデザインとは性質が異なります。
システムの抽象的な概念を直感的に理解できるか、間違えて重大なミスを起こさないようボタンの配置や導線が適切かなど、システム特有の使い勝手にとことんこだわります。
以下の事例は、ステージングと本番の環境があることや、それぞれの環境のステータスを直感的に理解、操作できるようにビジュアルを効果的に利用したUIです。
Beforeの段階でユーザービリティテストをした際に、「ステージングの状態が分からない」「本番とステージングの関係性がわからない」などのフィードバックを受け改善しました。
以下の事例は、あるデータを削除すると、稼働しているサービスへの影響が想定される場合に、削除対象物の名称をあえてテキスト入力させるというステップを入れたものです。手間にはなりますが、安定してサービスを提供するということを最優先に置くシステムならではのUIです。
働く環境
多様な経験ができる
ヤフーにはさまざまな社内システムプロジェクトがあり、デザイナーはアジャイル開発に入り、エンジニアと一緒にプロダクトを作っていきます。
所属しているデザイナーのスキルセットは、UX調査から、情報設計、ビジュアルデザイン、コーディングまでさまざまです。
1人で全てを経験しスキルの幅を広げることもできますし、得意な分野にフォーカスし伸ばすこともできます。苦手なことでも、得意なメンバーのサポートを受けながら挑戦することも可能です。
また、新規開発案件もあり、ブランディングやコンセプト設計の段階から関わり、0からプロダクトを作り上げる経験もできるのでやりがいを感じています。
ユーザーが社内にいる
ユーザーは従業員なので、小コストでユーザー調査ができます。
社内ポータルサイトでアンケートをとってインタビュイーを募集し、業務の合間に30分、社内のフリースペースでインタビューするということが日常的に行われています。
社内のみなさんはとても協力的で忌憚のない意見をいただけるので、デザイナーとしては大変やりやすいです。
新しい技術をどんどん取り入れられる
社内システムは、制約が比較的少ないため、新しい技術を取り入れやすい環境です。新しいデザインツールや手法があったら、試験的に導入してみるということが推奨されています。
そのため、常に最新情報にアンテナを張っているメンバーが多く、お互いが刺激を受けながら成長できる環境です。
直近では、Lean XPというアジャイル開発手法やFigmaの採用などを試しています。
社内システムに携わるデザイナーの可能性
社内システムのデザイナーの頭を一番悩ませるのは、ユーザーの行動の仮説をたてることが難しいということです。ユーザーがエンジニアであることが多く、エンジニアリングの深い知識が必要な領域な為です。
「どういう目的でこれを使うのだろう」「どういう情報が重要なのだろう」という疑問を、ユーザーにとにかくヒアリングして聞き出し、理解していくしかありません。
日本ではまだニッチな領域ですが、国内BtoB向けのSaaS市場の成長や、海外でのEnterprise UXの盛り上がりをみると、今後デザイナーに求められるスキルとなることは間違いありません。
難易度の高い領域ですが、ここでしか身につけられない専門的なスキルを身につけることができます。
おわりに
前半の記事では、社内システムのデザイナーについて紹介しました。
後半は社内システムに特化したデザインシステムの話を詳しく紹介します。お楽しみに!
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