2009年10月 7日

Tips

サービス普及のためのユーザーインターフェース指向型サービス開発

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はじめに

島津悠樹と申します。Yahoo!ブックマークのディレクションを担当しています。本エントリーでは、エンジニアのみなさまや企画担当の方を対象にサービス普及施策のヒントとなるような話題をお届けします。

「サービス普及のために何をすべきか?」

おそらくサービス関係者にとって永遠のテーマといえるこの課題に対し、ユーザーインターフェース(UI)を起点にサービスのあり方を考える方法が有効です。

特に効果的と思われるのは「アフォーダンス」と呼ばれる概念を応用した取り組みです。これより詳しくご紹介します。

アフォーダンスとは?

認知心理学の分野から出てきたのが、デザイン業界で転じて、道具の使いやすさ実現のためのキーワードとなりました。そのような経緯で普及した概念なので、文献によって定義がまちまちですが、「プチ哲学」(佐藤雅彦/著)での説明が比較的わかりやすいと思います。

いい道具というのは、むこうからこう使ってくださいという働きかけをしています。
これを難しい言葉ですが、「アフォーダンス」と言います。アフォード(afford)とは、与えるという意味です。むこうからこう使ってくださいという使いかたを与えてくれているのです。
(「プチ哲学」より)※注

具体例としては

取っ手のない押し扉
引き扉を連想させる取っ手を排除した仕様が扉の開け方をアフォードしている
自動車座席の形をしたパワーシートのスイッチ
スイッチ形状が座席の動き方をアフォードしている

といったものがあげられます(下図)。

取っ手のない押し扉 自動車座席の形をしたパワーシートのスイッチ

これらにUI設計やサービス普及のポイントが見え隠れしているように思うのですが、いかがでしょうか?

この感覚は何か、どのような状況で発生するのか、など把握することで、人の認知手法がより具体的で体系的にわかるようになります。

その理解をサービス設計・開発に生かすことで、使いやすいUI・便利な機能を生むきっかけ作りになるだけでなく、サービスのあり方・存在意義を根本から考える一助にもなると考えます。

サービス検討・開発にあたり、「アフォーダンス」やそこから明らかになる認知手法をぜひご活用ください。普及の糸口となるヒントがきっと見つかると思います。

※注
前述の「プチ哲学」のほか、以下書籍が参考になります。


新発想で考えるサービス企画

本エントリーは、去る2009年9月13日に開催された第3回SBM(ソーシャルブックマーク)研究会というイベントで私で発表した内容を再構成しお届けしています。

イベントでは、前述の内容をお話した後、「ソーシャルブックマークサービス普及のためのアフォーダンス活用」と題して、私で考えたサンプル企画案(全5案)をご紹介しました。人の認知によりフォーカスした発想でいままでにないサービス企画を出せるのでは......、という趣旨のもとに用意した実践例となります。これよりその内容をダイジェスト的にお届けします。

新企画(案)の前提
日ごろの生活で「ブックマーキング」に似た行為
  • しおり
  • 写真を撮る(お気に入りの小物・食事・人・風景)
  • スナップショット(いまこの瞬間を切り取る)
  • 新聞記事・雑誌記事の切り抜き・スクラップ
  • チラシの収集
  • 録画する・録音する
  • 覚える・記憶する・心に留めておく・メモる(手のひらに書く)
  • 感動する・感化される・感銘を受ける・いいなと思う
  • 印象を受ける・感じる
  • ほめる・拍手する・称賛する
  • 好きになる・ほれる
  • 気にする・気になる・心配する
  • 誰かにいわずにいられない
  • 既読の印をつける・ページの端を折る・(犬の)マーキング
  • 上記行為を後日振り返る・確認する
  • などなど

人の認知手法をいままで以上にネットで活用するには、日常生活のいろんな行為がヒントになると考えました。行為を洗い出した結果が上記リストです。「これをネットに再現するとどのようになるか?」という視点で企画検討を進めてみます。

上記リストのうち、5種の行為(しおり・スナップショット・録画する・誰かにいわずにいられない・行為を後日確認する)をピックアップしました。行為から想起される機能を企画化したのが以下5案です。

具体案1【しおり】
スクロール位置を保存するブックマーク
  • 「しおり」元来の用途は「ここまで読んだ」印
  • ネットでは、スクロール位置の保存機能に転化
  • あるスクロール位置を登録しておいて後日その位置データをもとに続きを読めるようにする

具体案2【スナップショット】
時系列概念を持ったブックマーク
  • ブックマーク機能の欠点のひとつである、登録先ページの内容が時間の経過とともに変化したり消失したりする点を改善する
  • スナップショットの感覚で使えるブックマーク
  • 同じページの重複登録が可能(登録時間別にデータ保存)

具体案3【録画する】
検索キーワードに基づく自動登録
  • ハードディスクレコーダーに見られるような番組録画機能をネットでも実現
  • 特定キーワードを登録することで、関連サイトを自動登録できる

具体案4【誰かにいわずにいられない】
伝達・評価ツールの一本化
  • ある商品について行いたい伝達・評価は1個のはずが、実際はECサイト・SBM・ブログ・ミニブログなどに分散している現状を改善
  • 利用者は各サイトに入力したいわけではなく伝達・評価をいろんな人に見てもらいたいだけ
  • データと表示を再整理し、入力する先は一つ、システム側で文脈に応じた表示に変換

具体案5【行為を後日確認する】
リンク色でブックマーク登録状況を判別
  • ブラウザにデフォルトで組み込まれているリンク色で訪問状況を判別するルール(デフォルトは青、訪問済みは紫など)を拡張
  • ブックマーク登録状況を表示するルールを追加

まとめ

サービス普及の試みについて、ユーザーインターフェース関連、特にアフォーダンスや人の認知手法という切り口でお話をさせていただきました。

私個人的に思うところは「新しいUI・サービスのヒントは、ネットではなくリアル(日常生活)により多く存在するのでは?」という点です。 そういった点も含め、ポイントをまとめてみました。本エントリーがみなさまのお役に立てれば幸いです。

新サービス構築にあたってのヒント 3か条
  1. 日常生活の延長としてサービスの在り方を検討すること
    • 利用者にとってネットの主目的は「生活を便利に」
    • 上記を充足させる何かがもっと必要
  2. 新しいものを新しいものと意識させずに使えること
    • 「ネットは新しい」「ネットだから特別」という先入観をなくす取り組みが必要
    • 既成のものと一体化させる・すりこませることで、新しくも特別なものでもないようにする
  3. 比ゆ・メタファーを活用すること
    • 日常生活で見た何かを画面内に再現するのに不可欠の手法
    • GUIを考案した先人の知恵に学ぶことはまだあるはず(「デスクトップ(机の上)」「ファイル」「フォルダ」など)

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