はじめに
こんにちは、アプリ企画・開発担当のR.Sugishitaです。先月、地盤採点アプリ「G-Banz(じーばんず)」をYahoo!ラボで公開しました。IT企業が地盤の評価なんて、「一体ヤフーは何を始めようとしているのか?」と思われるかもしれません。
本アプリは、昨年秋に開催されたHack Day Japan 7という社内イベントに出品し、R&D統括本部復興支援賞を受賞しました。それから約4か月間、改良を重ねて今回リリースに至りました。
「G-Banz」で液状化・地盤沈下の危険度を調べる
本アプリは独自のアルゴリズムにより、指定された場所のおおよその地形を判定し、そこから予想される地盤の状態を得点形式で表示します。企画の背景をご説明する前に、実際にアプリを使って採点するところをご覧ください。
まずは、東京湾の臨海地域で採点します。起動画面で[地図で指定]を選び、地図上で場所を指定して[決定]ボタンを押すと、採点を開始します。
採点結果は500ポイントで、★の数は何とゼロ。ちょっと残念な結果が表示されました。
次に荒川に沿って北上し、河岸付近で採点します。
先の場所ほどではないですが、2000ポイントの★2つとやや低め。微妙な点数です。
最後に南西方向へ移動し、坂を上がって六本木のあたりで採点します。
これまでとは異なり、6625ポイントと高得点で、★は4つ。かなり良い評価です。
上記の3か所を実際の地形に当てはめると、最初の場所は「埋め立て地」、2番目は「自然堤防」、最後の六本木付近は「台地」にあたるところになります。実際、液状化や地盤沈下は港湾の埋め立て地などで多く発生し、台地の上ではほとんど見られません。
このように、「G-Banz」を使えば、その土地の地盤をおおまかに調べられます。衛星利用測位システム(GPS)や住所検索にも対応していますので、地図上で場所を探すのが苦手な方は自宅前で[現在地を指定]ボタンを押すか、住所を入力して[検索]ボタンを押すだけで、ピンポイントにその場所を採点できます。
さらに、こうした実用的な使い方のほか、「G-Banz」では採点結果について、前日時点の集計データを元に全国順位を表示しています。本アプリのアルゴリズムならどのあたりの得点が高いか予測して、全国トップを狙ってみるといった楽しみ方もあります。
「G-Banz」の企画の背景
本アプリの企画のきっかけは、昨年の東日本大震災で液状化被害に遭われた方の「まさかこんな場所で」という言葉でした。確かに被災場所は海から遠く離れており、意外と思われるのも仕方ありません。しかし、大学時代に地形学を専攻していた自分からみると、そこは少なからずリスクを抱える地域でした。
液状化や地盤沈下が起こりやすい地域は、一般に「沖積低地(沖積平野、沖積地)」と呼ばれるところです。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、皆さんも学校の地理で「扇状地」「自然堤防」「三角州」を学ばれたと思います。これらを総称して「沖積低地」と呼びます。
沖積低地は河川が運んだ土砂が堆積してできた地形であり、地盤が軟弱なところとなっています。実際、前述した液状化の被災場所は沖積低地であり、(地形年代的には)つい最近、河川の堆積作用により海から陸地となったところでした。
このように、自分の住んでいる場所が沖積低地にあたるかどうかを知ることは、防災・減災に向けて非常に有効な情報となります。こうした地形(地盤)に関する情報をスムーズかつ分かりやすい形でユーザーに伝えることができないか、「G-Banz」はこのような背景から誕生しました。
「G-Banz」による地形分類
本アプリは「標高」をキーとしたシンプルな計算式により地形分類を試みておりますが、おおむね実際の状況に即した結果を得ております。
※採点アルゴリズムについては、Yahoo!ラボより「G-Banz」の紹介ページ(提供終了)をご参照ください。
以下は本アプリの採点結果を地図上に落とした図ですが、東京では武蔵野台地、名古屋では熱田台地、大阪では上町台地の上で高得点となっています。
凡例: | ...★×5 | ...★×4 | ...★×3 | ...★×2 | ...★×1 | ...★×0 |
もちろん、地形や地盤はさまざまな要因により決定されるものであり、考慮すべき項目はまだまだあります。研究機関や調査会社の方々で、より精度の高い計算式やデータなどご提案がございましたら、ぜひご連絡いただければと思います。
おわりに
かつて「日本のような軟弱地盤の多い国では、高層ビルの建築は無理」と言われた時代がありました。しかし、建築技術の進歩により、ご存じのとおり今では数多くの高層ビルが建てられています。このように、必ずしも「軟弱地盤=危険」という訳ではなく、土地の地盤を理解して万全の対策をしておくことで、災害発生時の安全を保てます。
このアプリをきっかけに、皆さんの「土地の地盤」への関心が少しでも高まっていただければ幸いです。Android端末をお持ちの方は、ぜひ使ってみてください。
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