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テクノロジー

迅速な開発支援で事業成長に導く精鋭部隊『SWATタスクフォース』

こんにちは、CTO室のSWATというエンジニア組織でマネージャーをしている田口です。

SWATとは、全社横断で技術支援を行っているエンジニアチームです。技術的に高難易度な課題や緊急を要する課題の解決をミッションとした開発組織で、全社的に重要度が高く緊急性のある案件に幅広く対応しています。

今回の記事では、SWATタスクフォースという組織がなぜつくられたのか、そしてどのように運営しているのかを紹介します。

SWATタスクフォースとは

先述したようにSWATは技術課題解決にフォーカスしており、ヤフー社内において事業に関わる重要な業務や緊急性の高い業務をエンジニアリングで解決しています。しかしながら、SWATは少数精鋭のエンジニア集団であるが故、組織規模をすぐに大きくすることが難しく、各サービス内における課題に対して限られた範囲の対応に終始していました。

そのような中、2020年以降の新型コロナウイルス流行により、ヤフーが企業として社会的な重要課題を次々と対応していく必要性がでてきました。新規事業やサービスの大規模改修へ即座に対応するためには、旧来のSWATだけでは対応しきれない恐れが出てきたのです。そこで各サービスの部署からエンジニア、デザイナー、ディレクションの精鋭が選出され、期間限定で集められたのが、SWATタスクフォースのはじまりでした。

当時は新型コロナウイルス流行における社会的課題の解決に特化しており、その活躍を当時のCTOである藤門さんが、Yahoo! JAPAN Tech Conference 2021のKeynote(動画)で紹介しています。

Yahoo! JAPAN Tech Conference 2021のKeynoteにて

その後、Zホールディングスグループ各社への支援などヤフーが関わる事業規模が拡大していくのに伴い、組織のミッションも

「社会および事業の変化に伴う重要な業務へ迅速かつ安定的な支援を実現する」

となり、現在は1年任期で総勢30名ほどからなる組織で活動しています。

SWATタスクフォースの活動事例

ここではSWATタスクフォースが関わった業務を詳しく説明しませんが、Yahoo! JAPAN Tech Conference 2022 のセッションで紹介された事例へSWATタスクフォースが支援していますので2つほど挙げます。

いずれの業務もタスクフォースメンバは、サービス知識がほとんどないところからスタートしていますが、3ヶ月未満の出動期間でありながら求められている機能のリリース達成まで支援できています。

業務の流れ

ここから具体的にSWATタスクフォースがどのように業務を受け、メンバーが担当していくかを説明していきます。

ヤフーでは、コマース、メディアなど各領域で最高技術責任者が任命されています。SWATタスクフォースは、各領域の最高技術責任者によって承認された業務のみを担当する、と定義しています。各領域で最高技術責任者からSWATタスクフォースに出動要請が出されたことを受けて、SWATタスクフォースの運営が要件にマッチする人選をした後、業務が開始される(出動)ことになります。その流れを以下の図に示しています。

業務の流れ

出動が決まったタスクフォースメンバーは、各サービスの業務からタスクフォースの業務へ切り替え、求められている要件達成まで(最大1年間)タスクフォース業務に注力します。そして担当している業務の要件を達成したら、各サービス業務に戻ります。ここまでが一連の業務の流れです。

個々のタスクフォース業務は、求められる役割から携わる期間までさまざまなものがあり、この流れ通りにいかないケースもありますが、基本はこの流れで運営メンバーが個別のフォローしながらタスクフォースメンバーをサポートしています。

運営として心がけていること

私はこれまでのSWAT組織運営をしつつ、SWATタスクフォースの運営メンバーも兼任しています。その立場で見ていると、任命される方はどなたも優秀で驚かされます。メンバーを預かっている運営としては、コミュニケーションのすれ違いによるミスでパフォーマンスが発揮できないとならないようできる限りの注意を払っています。

ヤフーには約1万人ほどの従業員が在籍しており、大多数は各サービスの組織に所属しており、それゆえにプロフェッショナルとしてスキルも考え方も磨かれていると考えています。その方々が横断組織でその強みを活かしていくには組織間にある文化や考え方の違いをできるだけ早く埋めていってもらうことが重要です。

そこでSWATタスクフォースの運営では次の3つを特に重視して取り組んでいます。

  • 求められているスキル、経験とのマッチング
  • 組織間の情報伝達ルートの一本化
  • 人選から撤退まで個別フォローの徹底

求められているスキル、経験とのマッチング

タスクフォースに任せられる業務には即時戦力となるような人材が求められます。いただいた要件を達成できる確度が高い人を選出できるように事前にタスクフォースメンバーのスキルマップを主務で担当しているサービス部署の上司や本人へのヒアリングにて作成することにしています。

こうすることであくまで双方とやりとりするのはタスクフォースの運営メンバーのみにして、人選する精度をできる限り高める狙いがあります。時にはスキルや経験がどうしても要件とマッチしない場合もありますが、その際もタスクフォースメンバーを無理に人選することがないように要請があった業務の現場に運営メンバーから要件を調整できないかを働きかけています。

組織間の情報伝達ルートの一本化

先程のマッチングの際にも触れたようにタスクフォース業務を俯瞰してみている運営メンバーをとおして情報のやりとりが行われます。

タスクフォース業務はいずれも重要案件で支援する先の部署が、さまざまな部署から集められているタスクフォースメンバーに対して、1から説明して回っていては時間の浪費になってしまいます。

そこで業務内容以外の組織間のやりとりはタスクフォース運営メンバーが間に入り、部署間の煩雑になりやすいやりとりを軽減するクッションのような役割を担うようにしています。このように情報が伝達されるルートをあらかじめ決め、タスクフォース運営メンバー間の認識や要請された業務に対する理解が正しい状態を保っておくことで、双方が業務に対して集中しやすくなります。

情報伝達ルート

※ 要請元の現場とメンバー個別でやりとりが発生するときもあります

人選から撤退まで個別フォローの徹底

ヤフーの中でも精鋭がタスクフォースには集まっていますが、実際に担当するメンバーにとって初対面となる関係者、初めて詳細をみるシステムの開発になることがほとんどです。慣れ親しんだ環境とは違い、本人が思っている以上に気持ち的にも負荷がかかる状態になることは、中学校から高校へ入学するとき、学生から社会人になる時の感覚にも近いものがあり、多くの方が経験してきたことではないでしょうか。

メンバーの本来の直属上長にもフォローしていただいていますが、業務内容を逐次追うことは困難なため、タスクフォースの運営がタスクフォースメンバーの方との逐次1on1で対話する機会をつくっています。進捗状況だけでなく気になっていることや業務上の懸念などを掘り下げて、必要があれば業務先の現場と調整をすることもあります。(業務が過負荷になりすぎていないか、意見を言いたくても言えない状況になっていないかなど)

業務状態によって適時1on1の開催頻度は変えていきますが、担当していた業務が終わるまでそのフォローアップを欠かさず行っています。

タスクフォースを続けてきたことによる効能

ここまでタスクフォース業務の流れと運営の取り組みを紹介していきましたが、このSWATタスクフォースを2020年から2年間続けてきたことでどのような影響が出ているかを関わった各人それぞれの視点から示していきます。

業務を支援してもらったサービス現場の視点

タスクフォースに支援をもらえたという点からみて、タスクフォース業務終了後にはポジティブなフィードバックが9割以上を占めていました。またそれだけでなく以下のような改善やスケジュールの前倒しができたといったフィードバックのコメントもいただけました。

現場フィードバック例

このようなフィードバックが得られたことからSWATタスクフォースの支援で、想定以上の成果につなげられたといえます。

出動したタスクフォースメンバー側の視点

タスクフォース業務は、緊急で余裕がないスケジュールであることが多く、出動している間はメンバーも振り返らないとは思いますが、業務終了後に本人や上司にヒアリングしたところ、以下のように普段の業務にはない知見を得られたこと、それを所属サービスの業務にも活かせたことを挙げてくれました。

出動メンバー側のフィードバック例

こちらも全ての業務が必ずしも該当するとはいえませんが、タスクフォース業務に出動した経験がメンバーにとってのこれまで得られなかった経験になって、より広い視点がもてるようになったなどの成長につながっているのではと考えています。

おわりに

さてここまでSWATタスクフォースの成り立ちから業務の流れ、運営の体制、これまでの実績からみられる効能を紹介してきましたがいかがでしたか。

ヤフーは、2020年からリモートワークにおける業務主体に変更したことで働く環境で変わったことも多いですが、会社という組織で事業を動かしている以上、人と人の関係は切っても切れない大事な要素であることに変わりはないと考えています。そしてそれは精鋭が集まったSWATタスクフォースでも例外ではありません。

これまで成功例を挙げてきましたが、運営のミスで一歩間違えれば信用を失いそうになっていたことも少なからずあります。そのような失敗を精査しつつ、組織もサービスと同じように変化に強い仕組みづくりが求められているのではないかと考えています。

SWATタスクフォースはこれからも改善を重ねながら、人材の流動性を高めて成果につなげることへの一石を投じていきます。

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  • 新しい視点

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田口 雅浩
CTO室 SWAT

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