テクノロジー

社外からインスピレーションを得るためにはじめた「ギグパートナー」制度とその効果について

はじめまして。CTO室の林です。

CTO室では全社横断的に対応が必要な技術的な課題解決に取り組んでいます。
ヤフーでは、2020年7月より大々的なギグパートナーの募集を開始し世間から大きな注目を浴びました。エンジニア職としてはテクノロジースペシャリストというポジションを募集し社内のエンジニアと協働いただきました。

この記事では実際にギグパートナーとして1年半もの間ご参画いただいた樽石将人さんとの協働事例をもとに、より効果的に協働していくために受け入れ側として工夫したこと、そしてギグパートナー側の視点での感想やギグパートナーとして活動する心得について紹介します。

テクノロジースペシャリストを導入した背景

ギグパートナーで参画された樽石さん、渡部さんと当時CTOの藤門による対談記事の中でも紹介されています。
担当のサービス開発に長く関わっていると無意識の中で制約事項を設けてしまったり、不都合を受け入れてしまったりすることが誰しもあると思いますが、社外の有識者と協働できる環境を作ることで、社内メンバーだけでは得難い幅広い発想やインスピレーションを取り入れることができるのではないかと期待していました。

――「テクノロジースペシャリスト」というポジションを募集した理由は?
ヤフー藤門:ヤフーは現在、100を超えるサービスを展開していて、多様な人材がエンジニアとして活躍しています。
ただ、一人一人は担当のサービス開発に集中しているため、どうしても外部からのインスピレーションを受けにくくなる。
だったらわれわれの開発現場に社外から人材を受け入れれば、より幅広い発想や考え方を取り入れることができるのではないかと考えました。
出典:「日本のエンジニアの働き方に違和感」ヤフー・Retty・Kaizen Platform3社に聞くギグワークの効能 - エンジニアtype | 転職type(外部サイト)

2020年10~12月の3カ月間は、樽石さんの専門分野であるデータセンターやネットワークについて集中的にアドバイスをいただいたのですが、2021年1月からはアドバイスをいただく範囲を全社に広げるべく、私が運営担当となり協働を推進しました。

樽石さんには、データセンターやネットワークなどのインフラをより強固で安定的なものにするミッションを担って頂きたいと考えています。
樽石さんはGoogleでサービス開発に携わり、その後は日本企業でも仕事をしているので、グローバルから見たときのインフラの在り方や、それを日本でオペレーションする際の組織づくりをアドバイスしてもらいたいです。
出典:「日本のエンジニアの働き方に違和感」ヤフー・Retty・Kaizen Platform3社に聞くギグワークの効能 - エンジニアtype | 転職type(外部サイト)

全社にインスピレーションを届けられるための工夫

樽石さんともどのような形であれば成果が出るか議論しどうすれば効果的なアドバイスを幅広くしていけるかを考えました。
検討の結果、テーマを「技術」と「エンジニア組織」の2種類にフォーカスし、相談会のような形でギグパートナーの樽石さんに相談ごとを持ち寄れる場を設計しました。

実際に以下のような相談ごとが持ち寄られました。

  • 技術
    • アーキテクチャのレビュー
    • サービスの負荷対策
    • システム運用の改善点
    • 事故削減に向けてできること
  • エンジニア組織
    • 教育
    • 評価

変わった内容として、再生エネルギーに関する取り組みに対する相談があったり、エンジニア組織に関しては、グループ会社全体に関する相談もいただきました。

相談に集中できる場作り

相談者に負担を掛けることなく、相談自体に集中していただけるように相談会のファシリテーションや議事録作成は事務局で執り行いました。また気軽に相談してもらえるように事前資料としていろいろ求めるようなことはせず、テキストでもパワポでも相談のために作られたわけでもないチーム内資料でも、相談を進められるのであればなんでも大丈夫というスタンスで進めました。

アドバイスの振り返り

短期的に実施できるもの、中長期的に取り組むものなど相談テーマによって多くのアドバイスを樽石さんからはいただきました。
その効果を知るため、相談会の数カ月後にアドバイスの活用状況(活用したのか、活用の検討中なのか、活用しなかったのか、なぜしなかったのかなど)のアンケートを実施しました。

多くのケースで活用にむけて前進している状況でしたが、一部活用に至らなかったケースは、社外の状況・情報を知りたかったや、ヤフーで導入するためのより具体的な助言がほしかったなど、アドバイスの活用目的の認識に相違があることが原因でした。
活用できたこと、できなかったことを樽石さんと共有し、現場が求めているアドバイスの方向性や方針を調整することで効果的なアドバイスができるよう取り組みました。

発見提供:アフロ

1年半取り組んだ効果は

振り返ってみるとさまざまな効果がありましたが特に実感できたことは3つあります。

改善の加速

アドバイスを聞いて終わりではなく、アドバイスに関連した取り組みが実際に実施されました。
一例として以下があります。

  • ポストモーテムのトライアル導入
  • パブリッククラウドの利用検討

また直接相談してくれた部門だけでなく、その周辺部門も追従する形で改善活動に取り組んでくれたのは想像を超える成果でした。外部からの刺激がマインドに変化をもたらし、新しい取り組みが組織内で自発的に生まれてきたことはギグパートナー制度の間接的な効果といえると思います。

自分たちの自信にもつながった

当初の期待していた社内メンバーだけでは得難い幅広い発想や考え方を取り入れる点においては、インフラ、システム運用、サービス開発さまざまな領域でいただいたアドバイスを実践し成果につなげられました。しかし、それ以外にもアーキテクチャーのレビューに協力いただいた際には、自分たちの考えたアーキテクチャーに対して社外の有識者から評価、お墨付きをもらえたことで現場の自信につながりました。

新しい課題の発見

各部門から挙がってきた相談を俯瞰で見ると、社外の有識者に相談できるという機会だからこそ出てくる課題がありました。
最初は課題として認識していなくてもディスカッションを通して課題として認識したのもあり、これは樽石さんからインスピレーションを受けたことで発見ができたと思います。
その課題を整理するといくつかの共通点があり、全社横断的な技術課題を解決を目指しているCTO室として今後取り組んでいくべき課題として発見・認識できました。

課題

このようにコロナ禍による在宅ワーク主体という状況下で、外部からインスピレーションを受けることが難しい状況ですが、ギグパートナーを通じて直接的、間接的、そして組織的にさまざまな変化、効果を得られました。

ギグパートナーに参加して感じたこと

樽石さんからギグパートナーとしての活動について、以下感想をいただきました。


樽石です。2020/10から1年半の間、ギグパートナーのテクノロジースペシャリストとして、インフラやエンジニア組織についてCTOやステークホルダーの皆様と非常に内容の濃いディスカッションを行なってきました。今回、ギグパートナーを退任するにあたり、一言メッセージを書いてほしいと依頼をいただきましてので、簡単ですが、今の気持ちを述べさせていただければと思います。

まず、ギグパートナーでは非常に多くのディスカッションを行なってきました。その中で概ね毎回のMTGで有益な結論を導き出し、成果につながったものもあると聞いています。お役に立てて光栄というのが正直な感想です。
加えて、参加されるヤフーのエンジニアに優秀な方が多く、要点が整理されていたため、MTGが進めやすく非常に助かりました。素晴らしいと思います。

さて、元々私がギグパートナーに参加したのは、ヤフーがスキルシェアを大々的に始めるということに非常に大きな興味を持ったからです。スキルシェアとは一体なんなのか。このことを自ら確かめるためにギグパートナーに参加しました。ご存じのように、ヤフーのギグパートナー制度は業務委託契約により業務支援を行う制度です。これは働き方が柔軟というメリットがある一方解約もしやすいため、成果にコミットすることを意識しなければいけません。成果が出なければ一方的に契約は終了します。スキルシェアに興味を持っている方はまずこのことをしっかり認識していただきたいと思います。

日本は少子高齢化で労働力が不足していることから、スキルシェアによる人材シェアリングエコノミーは日本の重大な社会課題を解決する可能性を秘めていると感じています。一人のエンジニアがさまざまな企業で成果を出せば、日本社会全体にプラスの効果を生み出していける。このような仮説からスキルシェア市場は着実に拡大しており、探せば何かしらの業務を開始することができます。ですので、この機会にぜひスキルシェアを始めてみていただければと思います。

ただし注意点が一つだけあります。それはスキルシェアで単なる時間の浪費をしないようにしてください。スキルシェア募集はほとんどの場合、即戦力の獲得です。したがって自分の過去の経験を再販売することがメインの業務内容になりますが、過去の経験を提供し、それで成果が出なければ契約はすぐに終了させられてしまいます。いくばくかの収入のほか、学びはほとんどありません。そしてそれを何度も繰り返してしまうと、いずれ成果が出ないスキルシェア人材と認識され、スキルシェア市場での評価が下がり、今後の自分の活躍に影響してしまうことになりかねません。

したがって、スキルシェアをする時は「成果を出す」ことを最も意識して取り組んでいただければと思います。成果を出すことが習慣になるようになれば、本業でも成果を出すことが習慣になるようになり、本業の経営者にもメリットが見出せます。ぜひ

「スキルシェアをする」 -> 「成果を意識する」 -> 「成果を出す」 -> 「本業で成果を意識する」 -> 「成果を出す」 -> 「スキルシェアをする」

こういった好循環を生み出せるようにトライしてみてください。あなたのエンジニアとしての市場価値が跳ね上がるはずです。そして、そういう人が日本に溢れるようになれば、日本のIT人材の未来は明るいと考えています。

以上簡単ですが、ITの経営者、エンジニア、労働者として働いてきた経験をふまえ、今回自らギグパートナーに参加し、感じたことを言葉にしてみました。引き続き常識を超えた行動ができるよう自ら率先して行動していきたいと思います。

ちなみに私は昨年末に起業しまして、代表(CEO)として事業を推進する傍ら、大手企業のCTOとスタートアップのCTOを兼務しており、3足の草鞋を履いています。育児もいれると4足です。最小のコストで最大の成果が出るように日々精進しておりますが、育児が最も大変です。コロナで保育園が休園になったら家庭は火の車。みなさん、子育て中のエンジニアにはぜひご配慮頂けますと幸いです。

ヤフーの皆様、ありがとうございました。これからも宜しくお願いいたします。


まとめ

樽石さんとは3月でギグパトーナー契約はいったん終了となりましたが、本当に多くのアドバイスをいただき感謝しておいます。最後の感想でもスキルシェアについてアドバイスをいただき本当にありがとうございました。
今回の取り組みで外部から刺激を受けることはさまざまな効果があり重要なことだと実感でき、本当に良かったと思います。

技術的な内容ではありませんでしたが、この記事を通してギグワークの有効性を感じていただければ幸いです。

ヤフーでは現在もギグパートナーを募集しています。ヤフーに興味がありましたらご応募ください。


林 孝宗
エンジニア
全社横断的に対応が必要な技術的な課題解決に取り組んでいます。趣味はスキューバダイビングでサンゴ移植活動にも参加してます。
樽石 将人
ギグパートナー(2020年10月~2022年3月)
元Googleエンジニア、元Retty CTO。祖母、福島県いわき市。「脱炭素にワクワクを」樽石デジタル技術研究所代表、大手小売業CTO、PowerX社外CTO、早稲田大学データサイエンス研究所招聘研究員、技術顧問数十社。遊住近接千葉県、渋谷区、米西海岸等を経て、浦安在住。

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