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テクノロジー

ヤフーにおけるデータ文化の育み方 〜 Z Data Meetup βのご紹介

こんにちは、CDO室の天神林です。
ヤフーにはいくつもの事業があったり、Zホールディングスとしてのグループ会社があるので、時にはそれらを横断して仕事を進めていく必要があります。CDO室では、そんなヤフーが持つ多様かつ大量のデータを価値に変えていくことを目的にして、組織に縛られないさまざまなデータ利活用のプロジェクトを推進しております。

本記事では、その中でもデータ活用に向けた事例共有・教育・相互理解という観点から、LINEと合同で企画・運営をしているミートアップについてご紹介します。

グループのデータ利活用における課題意識

バックグラウンドの異なる方と協業するにあたり、相手の持っている物事の考え方や進め方・担当領域などを理解し尊重することは、とても大切なことです。組織が大きくなっていったり、リモート環境下での業務が当たり前になるにつれて、他の部署では何をしているかわからないことだったり、微妙な言語の使い方の違いが、時として小さなストレスを生んでしまうことすらあります。

特にデータに関わる職種は、非常に幅広いかつ新しい定義を持ち合わせていることから、会話の中である種のすれ違いを感じた経験がある方もいらっしゃるでしょう。例えばデータサイエンティストという言葉ひとつを取っても、機械学習のモデルを作る人から、分析による示唆を業務へ落とし込む人、データ基盤を整える人に至るまで、個人や企業によって線引きが異なるケースが多く散見されます。

ヤフー・LINEでも、共にAIテックカンパニーを目指すに当たり、もしもこういった認知のずれが人材の交流や活用を妨げているのであれば、それを補正することにリソースをかけても良いのでは、と考えるようになりました。加えて、リアルな場での交流が極めて限られてしまう昨今の世の中において、経営統合したことによる一体感を産んでいく意味でも、何か交流の場を提供したいと思いました。

考えたイシューとミートアップによる解決アプローチ

そこで、AIテックカンパニーを目指すための初手として、データに関するカジュアルなミートアップの構想を打ち出し、グループ内だけでなく同企業内でも職種・業務の相互理解を深められる場を作ることにしました。

特に普段の業務であまりデータになじみがない方にとって、全社的に提供しているeラーニングではどうしても汎用的な内容になってしまう中で、実際のサービスでのリアルなデータ活用を知る学習機会としていただきたい、という期待もありました。

「Z Data Meetup β」の内容をご紹介

ミートアップでは、データ関連業務のテーマを各回ごとに設定して、ヤフー社員とLINE社員が交互に登壇し、自社の状況や知見を発表し合う形式にしました。Zoomを使ったオンライン開催とし、希望者はヤフー・LINEの方であれば誰でも参加することが可能で、参加者からの質疑応答なども行いました。また、ミートアップの名前は、「Z Data Meetup β」にしました。

本ミートアップの特徴は大きく2つで、うち1つは“β”という文字をあえて付けている点です。なぜならば“Z”といいつつも、まだヤフーとLINEの間での取り組みに閉じてしまっていることから、今後は他のグループ会社を巻き込んでミートアップを拡大していきたいものの、まずは自分たちで土台固めをする・試行錯誤をしよう、といった意味合いを込めています。例え全社的なミートアップであったとしても、現場から上位レイヤー含めて「いろいろと試しにやってみて、走りながら考えていこう!」という思想をあえて前面に出すことにより、参加者の皆さまから「もっとこうしたほうが良い!」のようなフィードバックをいただきつつ、新しいものを一緒に作り上げていくことができている、と思います。(運営面を考えても、「βなのですみません!」という魔法の一言があれば、多少のご不便を掛けても許していただきやすい、という面もありました。笑)

Z Data Meetup βにおける各回のコンテンツ

もう1つの特徴としては、例えば機械学習のようにテーマを狭く深くすることはせず、「データ関連」という主語が大きいプログラムにしている点です。「データに関するものなら何でもOK!」という大きな門を作り、ヤフーとLINEの組織や実業務の話、あるいはデータアナリティクス・サイエンスなど、毎回テーマを変えて開催することで、相互理解を深めています。開催回ごとにサブテーマを切ることで、「機械学習の話を聴きたくて参加したのに、ダッシュボードの可視化の話ばかりだった。がっかり……」というような、開催テーマと参加者の期待値のミスマッチを防ぐ目的もあります。

さらに開催の時系列で見ても、データ活用における実際のフローを意識して、各回サブテーマのプログラムを組んでおります。それによる効果として、スタンプラリーのように毎回参加することで、実際のデータ活用の流れに沿って、学習をよりわかりやすく進められます。加えて、ヤフーとLINEで発表内容のアウトラインをそろえることにより、必要十分なナレッジのみに削ぎ落とされ、両者を比較した形での理解が深まることを意識しています。結果として、ミートアップというフロー型のイベントから、継続的に掲載されるストック型の学習コンテンツとして、いわば一石二鳥の取り組みに昇華させることが可能です。

実際にご参加いただいた方からも、当初の狙い通り、ヤフーとLINEの相互理解だけではなく、改めて自社の再学習の機会にもなる、という嬉しいコメントも頂いております。

ミートアップ企画時の苦労や思考

以上のように企画・運営を行っている「Z Data Meetup β」ですが、初めからこのような形が思いついたわけではありませんでした。

最初に企画をした段階では、ヤフーとLINEにおける合同の取り組みであることも手伝って、それぞれのデータ関連業務の高度化や事業貢献が主目的であり、ミートアップではなるべくフォーマル色を強めるべきだ、と考えていました。せっかく同じグループ内で実施できるので、社外では話せないようなぶっちゃけ話や技術領域なども惜しみなく公開したり、データ関連業務のレベルアップにフォーカスしてみたい、という気持ちもありました。言い換えると、シナジー創出のためにグループとなったのにもかかわらず、ただお互いが仲良くなることを目的にしたり、さらにはトップダウンからそういった場を用意するのは、どうも良い結果となるイメージが湧いていませんでした。

一方で、事業貢献だけを目的にしてしまうと、結局ミートアップ自体が続かなくなってしまう、あるいはZホールディングスの他企業も入ってくると、ナレッジが直接事業に結びつかないケースも発生しそう、とも考えました。(例えば、アスクルの事例は物流的にZOZOに役立ちそうだけど、ヤフーのコマースの事例はそもそもコマースをメインで持っていないLINEに対して当てはめにくい、などですね)

さらに、そもそもの大前提として、ヤフー・LINE両社ともに現在〜今後にかけて、リモートワークによって直接顔を合わせないままに、業務をする機会が増えている・増えていくことがあります。その流れに加えて、多様なグループ会社も増え、誰しもが他のデータ・AI人材の人たちがどんな仕事をしているのか気になったり、交流や知見共有に飢えてくるのは、想像に難くないでしょう。したがって、お互いにナレッジや共通の話題を持ち寄ることにより、Zホールディングスでの横のつながりを作っておくことは、来たるべき将来を見据えても重要なことです。

そこで、データという共通点をきっかけにした、グループ会社間の緩いつながり作りを優先するのであれば、まずはカジュアルな雰囲気でも良いのかな、と思えるようになりました。さらに、これらは決してトレードオフではなく、まずはカジュアルな交流の先にフォーマルな価値創出があると考え、ミートアップはフェーズを分けて実施することにしました。

  • Phase1: データ環境・組織の相互理解、業務内容把握による個人のレベルアップ促進
  • Phase2: メンバーの個々のつながり構築、プログラム外での交流・切磋琢磨、業務への価値還元
  • Goal: 各分科会の発足、データ連携によるシナジーや施策創出、グループ横断での人材や知見の融通

といったイメージで、現在はPhase1である認識を強調し、皆さんに納得感を持っていただきました。

今後はこのカジュアルな交流を発端として、徐々にビジネスインパクトに結びつく場へシフトしていったり、個々が自律的に関係や実績を作っていくことを目指しています。

ミートアップを実施した結果とフィードバック

では、実際にミートアップをやってみてどうだったか? についてお伝えします。「Z Data Meetup β」では、“β”という言葉を試行錯誤という甘えに使うのみならず、将来に向けてフィードバックループを回すためにも、事後アンケートを実施しています。さらにアンケート回答方法についても、社内ツールと連携することで出来る限りの協力を促し、幅広い意見を募ることができるように工夫を凝らしています。

以下の数字は、ある回の事後アンケート集計結果です。母数としては、ヤフー・LINE合わせて約600人が参加した回のうち、およそ半数であるヤフーのみの回答結果を集計しています。

ミートアップ実施による事後アンケート回答結果

運営側の手探りな状況を癒やすがごとく、総じてとてもポジティブな反応をいただくことができています。内容については、やはり専門領域・習熟度ともにさまざまな方が集まったミートアップなのもあり、限られた時間でどういったコンテンツを提供すべきか、あるいはトピックを分けて専門的な会をスピンオフすべきかなど、引き続き議論を重ねていこうと考えています。一方で、グループ連携がまさにスタートしようとしている現在のフェーズにおける目線の優しさ、というバイアスも否定はできないので、これに甘んじることなく改善を続ける必要がある、とも思っています。

また、具体的な自由回答もいくつかご紹介します。

いつものミーティング風景のような和やかな雰囲気で進められ、両社の関係性の良さが伝わってきたのがとても良かったです。

LINEとヤフーの社員が互いにラフに話していたので、関係性の構築もうまくいっているのかなと感じました。個人的に、これからヤフー側と業務で関わる可能性が高いので少し不安が薄れました。

このように、「グループとしての関係性の構築もうまくいっていけそう! 一緒にやっていこう!」という気持ちを持っていただけるなど、企画・運営側としては思ってもいないところで、プラスの側面があることにも気付かされました。

また、

LINEだけではなく、ZOZOやPayPayなどのZホールディングスの他の企業の様子も知りたいです

といった声も上がっているので、今後はさらに参加グループ企業を増やしていくことを検討していきたいです。

その他「データ文化形成」に向けたCDO室の取り組み

CDO室では他にも、データ文化を作るためにさまざまな施策を実施しています。

ヤフーにおけるデータ文化形成に向けた取り組み

例えば、社内におけるデータ利活用の促進や裾野の拡大、および事例共有などを目的として、「データアワード」という報奨制度を設けています。これは、実際に企画するCDO室側から見ても付随成果があり、「データアワード」におけるエントリーを見渡すことで、各事業や部署におけるリアルなデータ利活用に向けた課題・それに対するアプローチを情報集約できます。具体的な内容としては、事業課題と優秀なタレントがマッチしない、機械学習の使い方や可視化指標などがわからない、そもそも誰に相談していいかわからない、などなど……現場の困り事と解決策を俯瞰して見ることで、本当に成すべき取り組みの優先順位を決めていくことができます。

また、Kaggleコンペ上位入賞者への報奨制度として、「Kaggleチャレンジ」という取り組みも新たに整備されました。さらに全社員へ向けて、データ分析の手法・機械学習の礎となる数学・社内外のさまざまなツールの使い方など、多くのデータ教育コンテンツを用意しております。もちろん、本記事でご紹介したような「Z Data Meetup β」だけではなく、社内有志による勉強会も分野や難易度に問わず、数多く実施されています。

このようにヤフーでは、意欲がある方はいくらでもデータ利活用について学ぶ・試す・話すことができる環境が整っています。こういった一人ひとりの、ある種ボトムアップ・能動的なアクションと、トップダウン・受動的な経験が組み合わさることによって、結果としてデータ文化の形成につながっていくのでは、と考えています。ボトムアップでは、データ利活用について未経験者が理解度に合わせて学べたりと、一方通行的な教材の提供だけでは得られない知見を得られます。トップダウンでは、自分自身の土地勘のない領域外も含めて、物事の視野が広がる・現在地との差分や新たな結びつきに気がつくことにより、学習成長機会を増やすことにもつながります。

今後の展望としても、トップダウン・ボトムアップ双方のバランスを取りながら、社員全員がデータ利活用について幅広く触れられる機会を増やす工夫を重ねていきたいです。

おわりに

本記事では、ヤフーにおけるデータ文化の育み方の一例として、「Z Data Meetup β」を中心にご紹介しました。

この記事を読んでくださっている方の中には、「データ・AI人材を目指すにあたり、何をしていいかわからない!」「データドリブンな文化に変えてほしいと言われてしまい、どうすれば良いか困っている!」という方もいらっしゃるかもしれません。いずれの場合にも、データ分析や機械学習のような技術的ハードスキル、人間的なコミュニケーションなどのソフトスキル(ヤフーもLINEも本当に良い方が多いです)だけではなく、両方のスキルを使いこなして、自他の経験知を共有・活用するメタスキルを磨いていく必要がある、と考えています。ミートアップも含めたさまざまな施策は、こういったスキルの積み重ねや情報共有・切磋琢磨を介して、結果として人材育成やデータ文化形成につながっていくと期待しています。

私たちの試行錯誤も含めたさまざまな取り組みが、少しでも皆さまの参考になれば、大変嬉しい限りです。本記事の詳細はYahoo! JAPAN Tech Conference 2022でもお話ししておりますので、併せてご参照ください。

また、一緒に働く仲間も募集しておりますので、興味を持っていただけた方はぜひ採用ページもご覧ください。

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ご感想ありがとうございました


天神林 大士
CDO室プロジェクト推進
2021年中途入社。グループ会社であるZOZOでのデータ分析業務を経て、現在はCDO室にてデータ利活用に関するさまざまな組織横断プロジェクトを推進。

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