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テクノロジー

コロナ禍でデザイン思考を社内に広めた活動 ~ 新しい働き方でもユーザーファーストを極めるために

Yahoo! JAPAN Advent Calendar 2021の17日目の記事です。

こんにちは。ヤフーの広告部門で、広告配信設定を行うための各種ツールのUI設計・改善、UXリサーチなどを担当しているUXデザイナーの近藤です。

2年前、Yahoo! JAPAN Advent Calendar 2019の記事で、デザイン思考を社内に広める有志活動についてご紹介しました。

デザイン思考を社内に広める活動紹介 〜 ユーザーファーストな「ものづくり」へ

記事の中でデザイン思考ワークショップのことをご紹介しましたが、当時はまだコロナ禍になる前で、社内のセミナールームなどに集まる形で実施していました。しかし、その後の新型コロナウイルス感染拡大とともにオンラインでの働き方に移行し、従来のような形で開催することが困難になりました。

この記事では、そんな状況の中でも何とか活動を続けていきたいという思いのもと、オンラインでデザイン思考を社内に広めるため実施した取り組みについて、ワークショップのオンライン化の過程と開催方法を中心にご紹介します。

なお、デザイン思考についての詳細はこの記事では割愛しています。ご興味がある方はぜひ上記の記事をご覧ください。

1. オンラインセミナー「デザイン思考基礎講座」開催

まずはできることから少しずつやってみよう……ということで、オンラインで実施しやすいセミナー形式の「デザイン思考基礎講座」を開催しました。

少しでも多くの人が参加しやすいよう質疑応答を含めて計1時間以内におさめ、デザイン思考の概要、「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイプ」「テスト」の5つのモード(ステップ)の進め方について解説したほか、実践のイメージをつかんでもらえるよう、担当するプロジェクトでデザイン思考を実践した事例も紹介しました。

参加者は約100名にのぼり、「デザイン思考の考え方に共感した」「実例が紹介されたので理解に役立った」「他の人にもこの講座をすすめたい」などの感想も寄せられました。デザイン思考についてより多くの人に理解してもらうきっかけとして、一定の効果があったのではないかと思います。

一方で、「実践までを経験することで、役立つかどうかがわかると思う」という声もあり、デザイン思考のプロセスを実際に体験できるワークショップの必要性をあらためて感じました。

2. オンラインワークショップ開催に向けた準備

「デザイン思考基礎講座」の参加者数の多さやアンケート結果から、デザイン思考に対する関心の高さやワークショップ開催のニーズを実感できたため、オンラインワークショップの実現に向けて準備を進めました。

2-1. ワークショップ設計

ワークショップのプログラム構成自体はある程度確立されたものなので、オンライン化にあたって全体の流れを大きく変えることはせず、主にワークの実施方法の見直しを行いました。

「共感」モードでのインタビューや「テスト」モードのワークなど、ペアで行う作業はZoomのブレイクアウトルームを使うことにしました。

デザイン思考のワークショップでは、「共感」モードでインタビューの内容を記載したり、「問題定義」モードでニーズやインサイト(潜在的なニーズ)を書き出したりと、さまざまな場面でワークシートを使用します。オフラインで開催していた時は印刷したワークシートを配布していましたが、オンラインでは別の方法で参加者に配布する必要があります。こういった時に「Miro」などの共同作業用ツールが便利ですが、この時はまだ社内で「Miro」が本格導入されていませんでした。そのため、ワークシートをPowerPointで作り、ダウンロードして使ってもらうようにしました。

インタビューと問題定義のワークシート図1:「共感」モードでインタビュー結果を記載するワークシート(左)と「問題定義」モードのワークシート(右)

オフラインのワークショップでは、「プロトタイプ」モードのワークの際、会場に用意された道具を使ってプロトタイプを作成していました。しかし、オンラインではそれができません。そのため、プロトタイプ作成用のシートを何種類か用意し、必要に応じてダウンロードして使ってもらうことにしました。ほかにも、参加者の手元にある筆記用具やタブレット端末を使って絵を描くなど、やりやすい方法をとってもらうようにしました。

プロトタイプ作成用のワークシート図2:プロトタイプ作成用のワークシート。スマートフォンの画面イメージ作成用(A)、パソコンの画面イメージ作成用(B)、操作フロー作成用(C)、アイデアのストーリー作成用(D)の4種類を用意

「テスト」モードでは、作成したプロトタイプを相手に見せてフィードバックをもらいます。Zoomの画面共有機能を使ってワークシートを投影する、手元で描いたものをカメラに向ける、手元で描いたものをスマートフォンで撮影して相手にSlackで送るなど、オンラインでプロトタイプを共有できる方法をさまざまな角度から検討しました。

また、ペアワーク時のZoomのブレイクアウトルーム作成、ワークショップ中にチャットで質問が寄せられた場合のキャッチアップなど、オンライン開催ならではのタスクも事前に想定し、運営メンバーの役割分担を細かく決めておきました。

<オフライン開催とオンライン開催の主な違い>

オフライン オンライン
開催場所 社内のセミナールーム Zoom会議
ペアワーク 隣の席になった人とペアを組む 事前に運営メンバー側でペアを決め、ペアごとに指定した番号のZoomブレイクアウトルームを使用
ワークシート 印刷したものを配布 所定のフォルダーに保存したファイルを参加者がダウンロードして使用
プロトタイプ作成 会場に用意された道具の中から選んで作成し、ペアの相手に見せる サンプルのワークシートか、参加者の手元にある筆記用具やタブレット端末を使って作成
Zoomの画面共有機能やカメラ、Slackなどを使ってペアの相手に共有
参加者からの質問 口頭 Zoomのチャットまたは口頭

2-2. オンラインワークショップのプロトタイプ開催

設計したオンラインワークショップがうまくいくかどうか検証するため、「デザイン思考基礎講座」に参加した人の中から希望者を対象に、少人数でのワークショップを試験的に開催しました。デザイン思考における「プロトタイプ」「テスト」のモードを、ワークショップ運営にも取り入れたのです。試験的な開催であることや、ワークショップ後のアンケートでフィードバックをもらうことをあらかじめ伝えたうえで参加者の募集を行いました。

プロトタイプ開催の結果、前項で述べたような方法で特に問題なく実施でき、参加者からのフィードバックもポジティブなものでした。このことから、準備段階で検討した仮説とアプローチが適切であることを検証でき、オンラインワークショップの本格開催に踏みきりました。

3. オンラインワークショップ開催

1回目のオンラインワークショップを、2021年6月に開催しました。定員は、オフラインで開催していた時と同規模の約20名。キャンセル待ちもあり、デザイン思考への関心の高さを感じました。

プロトタイプ開催の時より人数が多かったものの、混乱なく進められました。一方で、開催後のアンケートなどから後述のような課題も見えてきました。今後も改善を繰り返しながら、定期的に開催していきたいと思っています。

4. オンラインのメリットと課題

オンライン開催の最大のメリットは、場所の制約がないことです。オフラインでワークショップを開催していた時は、社内のセミナールームの空き状況によって日程を組みにくいことが多々ありましたが、オンラインならその心配がないため運営メンバーの予定調整もしやすくなりました。

ヤフーには東京のほかにもさまざまな拠点がありますが、在籍拠点に関係なく参加が可能なのもオンラインの大きなメリットです。以前は東京以外の拠点でワークショップを開催できる機会が少なかったのですが、オンライン化したことで、どの拠点の社員も参加しやすくなったのではないかと思います。オンラインセミナー「デザイン思考基礎講座」でも、約100名の参加者のうち、東京以外の拠点に在籍する社員が2割近くを占めていました。

一方で課題もあります。オフライン開催の時は、ワーク中に講師が参加者のテーブルを回り様子を見て声をかけるなどしていましたが、オンラインだとそういった細かなフォローがしにくい部分もあります。ワークの状況を把握して必要な時にフォローできるようにするため、今後は「Miro」の利用なども検討しています。

まだまだ新型コロナウイルスの感染状況に油断ができないため当面はオンラインでの開催になると思いますが、いずれ状況が落ち着いた暁には、オンライン/オフラインそれぞれのメリットを生かしながらさまざまな形でワークショップを開催していければと思っています。

5. おわりに

新型コロナウイルスをきっかけに、私たちの生活は大きく変化しました。いろいろと大変な状況ではありましたが、変化に対応しながらデザイン思考を社内に広める活動を続けられたことは良かったと思います。

共に活動に取り組んでくれた「デザイン思考ワーキンググループ」のメンバーや、活動に理解を示してくれた上長や周囲の人たちに、心から感謝しています。

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近藤 恭代
UXデザイナー
広告配信設定を行うための各種ツールのUI設計・改善、UXリサーチなどを担当しています。趣味は舞台鑑賞と大相撲観戦。

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