ヤフー株式会社は、2023年10月1日にLINEヤフー株式会社になりました。LINEヤフー株式会社の新しいブログはこちらです。LINEヤフー Tech Blog

テクノロジー

ヤフーが災害情報まとめページなどを素早く届けられる仕組み

こんにちは、UMAMIタスクフォースの小林です。今回は「新型コロナウイルス感染症まとめページ」や「東京2020報道特集(東京オリンピック・パラリンピック ガイド)」で利用されている「UMAMI」ツールをご紹介します。

最短30分。正確な情報を、素早く集めて、簡単にページを作れる

「UMAMI」とは、特集ページやランディングページを「素早く」「簡単に」生成するための社内ツールです。

ヤフーには多くの特集ページやランディングページが存在しており、「新型コロナウイルス感染症まとめページ」の様な人命に関わる情報を素早く正確にお届けするものや、「東京2020報道特集(東京オリンピック・パラリンピック ガイド)」の様な大きな国際的イベントの情報を幅広く集約したものなど、その種類はさまざまです。

「新型コロナウイルス感染症まとめページ」と「東京2020報道特集(東京オリンピック・パラリンピック ガイド)」の特集イメージ

多種多様な用途で利用されるページですが、それらに共通して言えることは、

  • ユーザーへ → 正確な情報をより素早く届ける
  • ページ制作者へ → より簡単に、より手早くページを作ることができる

という事項が求められるということです。

UMAMIはそれらを最小限のコストで実現することが可能なツールとして開発され、実例としてライフラインに関わる地震や大雨災害時は、発生から最短で30分ほどでページ提供を開始できています。

開発現場の課題感は、あちこちに情報が散在していること

世の中にはCMSなど、ページを生成するツール自体はたくさん存在します。 では、その様な状況下でなぜこのツールを開発することになったのでしょうか。

ヤフーでは100近いサービスを運営しており、それぞれのサービスが独立採算制に基づき日々進化を重ねています。
もちろん、どの様な情報をどの様な形で発信するかに関しても、サービスごとに権限を持ち最適な形で意思決定がされています。
そうすることで、各サービスは最も適した形でユーザーに情報をお届けしております。
ユーザーのニーズを取り込み、素早く情報をお届けする仕組みとしては、非常にうまく機能しています。

ところが、各サービスごとに「最適化」された複数の情報(データ)を混ぜ合わせて利用しようとする場合、前述した「素早く・簡単に作る」ということが困難になる場合も多々あります。

例えば、「東京2020報道特集(東京オリンピック・パラリンピック ガイド)」で
「来年に延期された東京オリンピックの男子サッカー決勝戦についての情報を調べたい」
というニーズに対して、

  • サッカーの決勝戦はいつ行われるのか?(→スポーツナビがデータ所有)
  • サッカーの決勝戦はどこで行われるのか?(→スポーツナビがデータ所有)
  • サッカーの決勝戦会場付近の当日の天気予報は?(→Yahoo!天気・災害がデータ所有)
  • サッカーの決勝戦会場までのアクセス情報(路線・地図)は?(→Yahoo!路線情報やYahoo!地図がデータ所有)
  • サッカーの決勝戦のニュース記事を読みたい(→Yahoo!ニュースがデータ所有)

などといった情報を提供する必要があります。

その場合、これらの情報を管理しているサービスのデータを活用しながら、ユーザーに適切な形で届く様なUIを生成しなくてはなりません。しかし、仕様が異なるそれぞれのデータを混ぜ合わせ、最適なUIに整形して……となるとそれなりの開発工数が必要となってきます。
また、ニーズのある情報の中にはデジタル化されていないデータもいくつかあり、担当者自らがデータを作成するといったケースも見受けられます。
これらを総合して考えると、それなりの規模でのプロジェクト化された案件として開発をしていくということになりがちで、お世辞にも「素早く・簡単に作る」とは言えません。

結果、現場での意思決定の速度は遅くなり、ユーザーに情報を素早くお届けすることが困難な状況になってしまうこともあります。

単に集めて混ぜればよいのではない

「データを混ぜ合わせてページを生成すること」はインターネットの世界では当たり前のことですので「そんなに難しいことではないのでは?」とも思いますが、それらのデータ量が非常に膨大かつ広範囲であって、それぞれが確立されたサービス専用に作られていたデータの場合、一日二日でどうにかなるレベルではないことは想像に難くないかと思います。

では、どうしたらこれらの課題を解決できるのでしょうか?
私が目を付けたのが「データを混ぜ合わせる」という部分で、「データを無理やり混ぜ合わせず、表示上は混ぜ合わさった見え方(ユーザーに最適なUI)にする」という結論でした。

私は本職がデザイナーですので、UI設計についてお話をすることも多くありますが、その際に「料理」を例に挙げて説明することがよくあります。
今回は皆さんもよく食されるであろう「たこ焼き」を例にご説明します。

私もたこ焼きは大好きで会社帰りなどにビール片手に食すことも多かったですが、とりわけ何が素晴らしいかというと、振り掛けるソースの多彩さかと思います。
「普通のソース」、さっぱり食べたい時には「ねぎポン酢」、ガッツリ食べたい時は「タルタルソース」、みんなでワイワイ「チーズ明太子」などなど。
では「これらの強力ラインナップを全部のせMixすれば最強メニューが出来上がるのか?」というと、そうはならないかと思います。
もちろんデータも同様です。

私はモノづくりの際にこれらの事象を指して「まぜるな危険」という注意喚起をすることがあります。 なぜなら、インターネットの世界において「情報量が豊富でそれらが巧みに混ざり合った場合に、非常に高い価値のあるものになる」ということが多くあり、深く考慮せずに安直にその手法を用いて失敗してしまう場面を多く見てきたからです。

そこで「多様データをユーザーに最も適切な見え方に整形し、ユーザー満足度の高い情報の届け方」を提供できるツールの開発に踏み出しました。

編集者による手入力もAPIデータも、集約して整形するシステム

それでは、UMAMIのコンセプトと構造(仕組み)を簡単にご説明します。

私共はUMAMIを「アグリゲートツール」と呼んでいます。
一般的に特集ページやランディングページを作るツールなのでCMSツールの類と思われることも多いのですが、UMAMIはあくまでも「必要なデータをアグリゲート(集約)し最適な形に整形する」ツールという側面が強いため、その様に定義しています。

UMAMIを利用したデータの流れ

上図の様に、形態が違う各種データはUMAMIを通すことによって、利用したい「UI」や「デザイン」に加工され、適切なトンマナやブランドに即した見え方に整形されます。
形態の違うデータを何も考えずに混ぜてしまっては世界観が崩れてしまったり、UIの統一などが困難になってしまいますが、UMAMIはそれらを補正できるデザインシステムとしての役割も兼ね備えています。

各種データはUMAMIで最適な形へ整形され、自動的にAPI化されます。
API化されたデータはWebページのみならずアプリ開発などにも利用が可能となるため、ありとあらゆるプロダクトやサービスでも利用することが可能です。

プロダクトを作る開発者や運用管理者にも便利に使っていただきたい

ユーザーに情報を素早く届けるためには、該当するプロダクトを「素早く・簡単に作る」ことが重要な要素となってきます。

ヤフーでは、ユーザーの生活をより便利にする情報から有事における災害情報、ライフラインの確立のために必要な情報まで、多種多様かつ重要度が非常に高い情報もお届けしております。
特に「有事における災害情報やライフラインの確立のために必要な情報」は、人命に関わる情報も含まれており、情報取得が一刻を争う場合もあります。

その様な情報を取り扱う私共にとっては「データの精度が悪い」「システム構成の不備で情報発信が遅延した」などはあってはならないことで、これらのリスクを排除するために

  • シンプルかつライトなシステム構成
  • 使う人を選ばず誰でも利用が可能なシステム、ツール
  • 状況に応じて臨機応変に対応できるUI設計(データ設計)
  • 利用する部署やサービス、人を選ばない柔軟なデータフォーマット

といった点を重視し、設計を行いました。

ヤフーが掲げる「ユーザーファースト」を達成するためにも、プロダクトを作る開発者や運用管理者にも優しい仕組みづくりが重要だと思っています。

おわりに

2011年3月、日本は東日本大震災という大きな災害に見舞われました。
過去に経験したことのない規模の地震と、それに影響された二次災害で日本はパニックに陥り、適切な情報が行き届かないばかりかデマ情報まで流れてしまう異様な事態でした。
私は生まれも育ちも福島県で、当時は絶望に暮れる毎日を過ごしていました。

そんな中、ヤフー社内で立ち上がった「震災タスクフォース」に参画し、まひしてしまった情報網の代わりに、ラジオから聞こえる救援物資情報や避難所案内などを手入力し日本全国にお届けすることができました。
苦しんでいる人がいて、その人たちが欲している情報をいち早く届けることがどれだけ大切で尊いことか、その経験を持って知ることができましたし、ヤフーに入社して本当に良かったと思えた瞬間でもありました。

現在も新型コロナウイルスの流行や大規模な大雨災害など、今まで以上に情報の取得の重要性を痛感し、困難な状況に陥っている方もいらっしゃるかと思います。
そういった中で「正確な情報をより早く、より正確に」届けることが重要ですし、そのためにもこういった仕組みをさらにアップデートしていきたいと思っております。

こちらの記事のご感想を聞かせください。

  • 学びがある
  • わかりやすい
  • 新しい視点

ご感想ありがとうございました


小林 靖大
UMAMIタスクフォース

このページの先頭へ