こんにちは。Yahoo! JAPANアプリのデザイナーをしている細見です。
2019年11月23-24日に東京国際フォーラムにてデザイナーを対象にしたイベント「Designship 2019」が開催されました。
自分は業務外の時間を活用して、このカンファレンス運営にオーガナイザーとして携わっております。今回は「Designship 2019」の振り返りと、事業会社のいちデザイナーが社外のカンファレンス運営に携わったことで得た学びについてご紹介したいと思います。
Designshipとは?
Designshipとは、さまざまな業界における一流デザイナーたちが集結し、それぞれの叡智や想いをステージにたってお話いただくデザインカンファレンスです。
2019の目的は、"物語の力で 「デザイン」の 壁を越える。"
その目的を中心としたコンテンツを、「ストーリーフロア」「コラボレーションフロア」と2フロアに分かれて提供しました。
(参考:Designship 2019が「物語」にこだわる理由)
初回となる2018年は、ミッドタウン日比谷にて開催しました。今年は東京国際フォーラムにて開催し、会場の広さが3倍以上、人数規模も3倍以上の3000人規模のカンファレンスとなりました。 運営メンバーは所属会社、職種や業界を越えたメンバーが集まり、当日だけのスタッフを含めて約90名。人数は十分なように思えますが、メンバー全員に本業がある"バーチャルチーム"で多くの準備をする必要があるため、誰が欠けても開催できなかったと思います。
なぜこのカンファレンスをやっているのか
Designshipのもともとの発端としては、2018年の2月に純粋にデザインを主軸にしたカンファレンス開催の必要性を感じたところから始まりました。IT業界では「iOSDC」「DroidKaigi」など有名な大規模公募型技術カンファレンスは存在しましたが、デザインに関する同等のカンファレンスは当時存在しなかったのです。 そこから芋づる式に当時のデザイン系イベントに関する課題感や想いは言語化されていき、最終的には「もっと現場のデザイナーの物語が聞きたい」「他の業界で働くデザイナーの話が聞きたい」と企画が整理され、Designshipの実施に至りました。
また世間で影響力が強いデザイナー以外にも、現場でクラフトマンシップを発揮している優秀なデザイナーの発掘をしたいという想いがあり、公募型であることにはこだわりました。
そしてありがたいことに、運営を進める中で自分たちの想定以上の反応(チケットの売れ行き・SNSでの反響・スピーカーへの応募者数など)をいただけたので、思想の根幹は変えずにカンファレンスの実施を継続しています。
Designship 2019の振り返り
ストーリーフロア
Designshipの一番の見所である、スピーカーたちの「物語」が語られるステージがあるフロア。TEDのようなプロフェッショナルが集うカンファレンスを目指して、スタッフ・スピーカー一同で力を合わせて準備しました。
コラボレーションフロア
参加者やスピーカー、企業それぞれで交流ができるエリアを特別に準備しました。各業界・各世代がつながりディスカッションするセッションエリアを中心に、各社企業ブース、公募&特別展示など、参加者の"物語"の分岐を起こせるようなコラボレーション企画がありました。特に企業ブースは他カンファレンスで類を見ないような思考を凝らしたコンテンツ揃いで、見どころがありました。ヤフーからの各セッション、ブース、展示について
またDesignship 2019ではヤフーとしてもセッションからブースまで、多様な取り組みを行ってきました。そちらもご紹介させてください。
セッション「ゴールから考えるユーザー体験」
ヤフートラベル/O2O領域のデザイン責任者である前嶋は、ヤフーの目指す世界はオンラインとオフラインの境界をなくして世界で一番便利な国を作ることである、と話しました。そのためにヤフーのデザイナーはゴールから逆算してKPIを達成しながらユーザー体験設計を行っていると、いくつかの働き方の例を上げながら話しました。
アーカイブ動画:「ゴールから考えるユーザー体験」
コラボセッション「買う体験の変化とこれから」
ヤフーショッピング部門デザイン責任者の安西が、楽天株式会社Cheeyen氏・クックパッド株式会社福崎氏とともにEC市場の未来について語りました。ヤフーショッピング、PayPayモール、ZOZOなど複数サービスを見る安西によると、例えば「カートに入れる」体験などデザイナーは統一したくなる傾向があるが、それぞれのサービスにおいてユーザーが感じているニーズが異なるので、無理にまとめることはせずにそれぞれのサービスに向き合っていきたい、といった話がありました。Yahoo! JAPANブース
Yahoo! JAPANブースではヤフーの公式キャラクター「けんさくとえんじん」のDesignship限定缶バッチがもらえる企画がありました。ヤフー社員と交流し、ヤフーの各サービスにおけるユーザー体験改善事例を聞くことで、ガチャガチャができるコインがもらえるようになっています。「Yahoo! JAPANアプリでみるスマートフォンアプリの歴史」
Things storyという公募&特別展示エリアでは、Yahoo! JAPANアプリの歴代UIアーカイブに関する展示を、自分が担当として準備いたしました。2008年に日本でスマホが発売され、約10年。変化するインターネット環境やデバイス、社会情勢に合わせてYahoo! JAPANアプリは改善を積み重ねてきました。
SNSでは、「懐かしい」「日本の歴史だ」「自分の担当サービスも変化を可視化すると面白いかも...」といった声をお寄せいただきました。
Designshipをやることでの学び
画面外の体験を含んだ設計をする大切さ
普段のヤフーの業務ではアプリやウェブサービスの画面とユーザーとの接点を中心に全体の体験を設計することが多いです。しかし、カンファレンスでは空間デザインから人の振る舞い・対応まで、画面に留まらないユーザー体験の佇まいが全体の重要な構成要素となってきます。自分も含め、このような規模のカンファレンスの運営が初めてのメンバーも多かったですが、空間デザインや人の動線などユーザー体験を向上させるために試行錯誤を繰り返しました。
例えば試行錯誤のひとつとして、アイデンティティの策定が挙げられます。
それぞれの分野に関するプロフェッショナルが担当することでカンファレンスの準備は確かに進行するのですが、全体を見渡すと時折意思決定にブレやムラが発生することがありました。そこで今年は全員が参照できるような「デザインシップらしさ」を言語化した"カンファレンスアイデンティティー"をメンバーと一緒に設計し、チーム全体に波及することで、認識をそろえるようにしました。
Designship における "Conference Identity" について
アイデンティティーを策定することで、ノベルティや空間デザイン・映像から、言葉や対面コミュニケーションなどの無形のものにまで、「第一線におけるリアル」「一人ひとり異なる筆跡」「軌跡」「熱量」という"Designshipらしい"キーワードを意識してスタッフが準備することができ、統一した世界観を持たせることができました。
上記のカンファレンスアイデンティティに関してはまだまだ改善点は多くあるものの、メンバーが同じ立場から意見が言えるような土壌構築の一歩になったと思います。
ヤフーでもオンラインとオフラインの境界をなくす世界を目指して日々サービス改善の試行錯誤を繰り返しています。Designshipの運営を通して、画面を越えたどのような対象の課題に対してもデザイナーとしてのアクションをできる可能性と必要性を改めて感じます。
そして次の物語へ
この記事を読んで、少しでもDesignship当日の様子に興味もってくださった方は、ぜひ来年は実際に会場に足を運びに来ていただけるとうれしいです。スタッフ一同で細部までこだわり、さらにUPDATEしたカンファレンスを準備していきたいと思います。
またDesignship2019の当日のセッションを見逃した方は、アーカイブ動画がありますので、年末などにご覧になっていただければと思います。
Designship 2019のアーカイブを見る
写真:一般社団法人デザインシップ
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