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テクノロジー

二人のジム

COO室の曽根です。

『二人の』シリーズ第二回目は『二人のジム』。ジム・クラーク(1944年生まれ)とジム・バークスデール(1943年生まれ)を紹介します。

ジム・クラーク(James H. Clark)。大学教授でありながら三つの会社の上場に携わったというアントレプレナーシップ(起業家精神)の権化ともいうべき人物。最初の上場であった三次元映像処理のシリコン・グラフィックス社だけでも大いなる業績と言えるところであるが、ウェブブラウザを提供する会社であったネットスケープコミュニケーションズの上場はインターネットの歴史において、さん然と輝く。

インターネットの将来に大きな可能性を感じていたクラークは1993年、イリノイ大学でモザイクという名のブラウザを開発していた学生グループの中心人物、マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)に「ご存じないかもしれませんが、わたしはシリコン・グラフィックスの創業者です。そしてまた、新しい会社を興そうと考えています。」から始まる手紙を書き、一緒に会社を興した。

当時クラークは49歳、自身の半分にも満たない若干22歳のアンドリーセンとウェブブラウザの可能性に賭けたのだから、彼のけい眼と行動力には恐れいるばかりである。

ジム・クラークはネットスケープの会社運営にあたり、ジム・バークスデール(Jim Barksdale)に声をかけ、CEO(最高経営責任者)になることを依頼した。バークスデールは大手通信会社でのCEOや運輸会社でのCIO(最高情報責任者)経歴も持つ、現場もマネジメントも分かると企業運営のプロであり、急成長を求められているネットスケープにはうってつけの存在だと考えたらしい。クラークもこのあたりが老かいである。若さや勢いだけで前進しようとせず、上場を目指す企業特有の社会的責任や法規制など、経験がモノを言う場面も多いことをクラークは十分に理解していたのだろう。

バークスデールといえば、筆者はクルマの運転中に米軍ラジオの放送に彼が出演していたのを聴いたことがある。司会者の(半分冗談混じりの)「あなたはWindowsを使っていますか?」の問いに、(一瞬の間をおいて)「もちろんです」と、ちゃめっけたっぷりに答えていたのを思い出す。なかなか機知に富んだ人物だと思った。

かくして同世代の二人のジムによって支えられていったネットスケープは1998年AOLに買収された。10年たった今となってはネットスケープの話題が出ることは少なくなったっが、ネットスケープの中で芽生えを見たオープンソースのMozilla Project(モジラ・プロジェクト)はFirefoxの源流としてしっかりとインターネットのメインストリームに生きている。

その後、クラークは医療向けサービスを展開するHealtheon(ヘルシオン)を興し、三回目の株式公開を果たす。一方のバークスデールはThe Barksdale Groupというベンチャーキャピタルを創設し、古巣のフェデックスやサンマイクロシステムズ、タイムワーナーといった大企業の取締役会に名前を連ねながら、米国大統領から外交情報諮問会議のメンバーにも指名されている。

クラークの娘Kathy(キャシー)はYouTubeの共同創立者であるChad Hurley(チャド・ハーリー)と結婚している。企業家の令嬢と企業家の結婚、数奇か当然か、なにかドラマチックな気がした。

次回は「二人のラリー」をお届けします。

第一回「二人のティム」はこちら

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