みなさんこんにちは。
システム統括本部 技術支援本部所属の伊藤 宏幸(@hageyahhoo)と申します。アジャイルコーチおよび自動化推進者として、各社内サービスのテスト自動化の自発的な実現をサポートしております。また、Scrum Alliance公認の認定スクラムプロフェッショナル(CSP)でもあります。2015年11月1日に入社したばかりですが、本日12月3日のAdvent Calendarを担当させていただきます。
今回は、先日開催した社内のスクラムマスター勉強会で気がついた、スクラムマスターを評価するための工夫と、Yahoo! JAPANにおける取り組みについてお話しします。
スクラムマスターは評価されない?
そのスクラムマスター勉強会は、スクラムマスターを担当している参加者各自が、日々抱えている悩みや相談したいことを持ち寄って相談し合う形式でした。その持ち寄られた課題をいくつか確認していると、「スクラムマスターであることが評価されない(ので、評価される方法を知りたい)」というものが目に付きました。これは私自身も経験した課題だったので、興味津々でその相談に乗ることにしました。
相談者から詳しく話を聞いてみると、以下のような状況であることが分かりました。
- スクラムイベントの手配ばかりを任される「便利屋」である
- それゆえ、新卒2年目程度の人がアサインされていることがある
- チームメンバー全員がスクラムに習熟する速度を早めるために、スクラムマスターをスプリントごとに交代している
- スクラムそのものへの習熟度は上がるが、スクラムマスターとしての習熟度は上がらない結果となってしまっている
- スクラムマスターとしての「成熟」が何であるのかが分からず迷ってしまっている
- そのために、単なる「便利屋」に落ち着いてしまい、立場がマンネリ化してしまっているケースがある
確かにこの状況は、相談したくもなるな、と思いました。
なぜ評価されないか?
そもそもスクラムマスターの役割とは、スクラムのプロセスをチームに習熟させ、チームの障害(impediments)を取り除き、チームとプロセスを守ることにあります。すなわちスクラムマスターは、誰にでもできるものではない、成熟の必要な役割です。スクラムマスターの役割と成熟については、『スクラムガイド』をご覧ください。
さらに加えて、上記の相談例はいずれも、スクラムマスターとしての習熟度を「見せる」という観点が欠けています。見えないものは、評価できない/されないのです。評価されることがスクラムマスターの役割か? という問題はありますが、評価をされたければ、評価をされるだけのプラスアルファのこと、すなわち成果を見せていく態度もあわせて必要でしょう。
評価されるスクラムマスターとは
上記の相談に対して私は、スクラムマスターとしての習熟度の指標、およびスクラムマスターとしての習熟度・成果の「見せ方」として、具体的に以下のアドバイスをしました。
1. 所属ラインのマネージャを満足させる
尊敬する先輩から私は、所属ラインのマネージャが達成すべきことは次の3点だということを教えられました。
- 売上の向上
- 利益の向上
- 従業員満足度の向上
評価者である所属ラインのマネージャの評価を得るならば、これらを達成することは必要と言えるでしょう。また、スクラムチームのステークホルダーのひとりとしての所属ラインのマネージャの評価を得ることは、円滑なスクラム運営のプラスにもなります。したがって、この活動は立派なスクラムマスターの役割であるとも言えるでしょう。
2. 成果を「数値」で見せる
一方で、所属ラインのマネージャらステークホルダー、およびチームメンバーを納得させる成果というものは、見せづらいのも事実です。例えば「従業員満足度の向上」の1つとして、メンバーの成長を見せるには、どうすれば良いのでしょうか?
その場合に役に立つのが、「プロジェクト・メトリクス」ないし「アジャイル・メトリクス」という、状況とその変化を数値で見せる手法です。例えばメンバーの成長であれば、CMSへのコミット数の増減、レビューをパスする率の変化、スプリントあたりにクローズできたユーザーストーリー数の割合(DONE率)の変化など、さまざまな方法で表現することが可能です。
こうした1つ1つの工夫が、スクラムチームを成長させ、ステークホルダーらとの関係を良好にしていきます。
【参考】『メトリクスによる「見える化」のススメ: エッセンシャル・リーン』
3. スクラムマスターの習熟度指標を使い、習熟度を高める
スクラムマスターの習熟度の指標として、具体的には以下のものがあります。これらを参考にすることで、スクラムマスターとしての習熟度を高めることが期待できます。
スクラムマスターを支援する制度と会社
Yahoo! JAPANには、アジャイル・スクラムを全社的に支援することを目的としたコーチ陣が集まる部署があります。また私のように、テスト自動化やDevOpsなど、別の観点からアジャイル・スクラムをサポートしている人々もいます。さらには、社内でのアジャイル・スクラムの普及や新米スクラムマスターの成長のサポートに貢献する制度もあります。
上記の組織や人に加えて、今回の例のように、スクラムマスターまたはアジャイル実践者らの交流や勉強会の開催も増やしつつあります。
つまりYahoo! JAPANは、スクラムマスターを支援する制度を持つ会社だということができます。そんなYahoo! JAPANに、刺激を感じませんか?
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